2014 Fiscal Year Research-status Report
自然神学の言語論的転回とその社会科学への拡張─聖書・環境・経済─
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25370070
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
芦名 定道 京都大学, 文学研究科, 教授 (20201890)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自然神学 / 現代キリスト教思想 / 韓国キリスト教 / 無教会 / 貧困 / 原子力 / 脳科学 / 環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代の思想的状況におけるキリスト教思想の多様な動向を視野に入れつつ、社会科学(とくに、経済学と政治学)との関連で自然神学を再構築することを目的とし、この再構築を通して、環境と経済をめぐる現代の深刻な危機的状況に対して、宗教・キリスト教が蓄積してきた伝統的な知恵を、有意味な仕方で再提示することを意図している。 具体的には、関連研究領域において刊行された文献購入や、共同研究(研究会、学会)やフィールド調査による資料収集によって蓄積された資料を基礎とし、それらの分析を通した理論構築を行うという仕方で研究は進められ、平成26年度は次のような研究成果を得ることができた。 1.韓国ソウルにおけるフィールド調査の実施。韓国YMCAとカトリック教会(環境司牧委員会と貧民司牧委員会)において、環境、平和、貧困などの諸問題の担当者にインタビューを行った。現場の担当者から直に韓国キリスト教界の実際の取り組みを伺い、合わせて文献収集を行った。その具体的な成果は、http://logosoffice.blog90.fc2.com/ にて公開。 2.自然神学の社会科学への展開という問題に関して、次の二つの学会で講演を行い、関係者との討論を行った(この講演については、それぞれの学会誌で論文化の予定)。東西宗教交流学会(「脳科学とキリスト教思想」)、キリスト教文化学会(「原子力とキリスト教思想」)。 3.自然神学を聖書解釈を手掛かりにして社会科学へ展開する上でのモデル・ケースとして、日本の無教会キリスト教を位置づける可能性を検討し、一定の見通しを立てることができた。その研究成果は、「アジアと宗教的多元性」研究会の研究報告雑誌「アジア・キリスト教・多元性」13号に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自然神学を聖書解釈を通して社会科学へ拡張するという目標は、関連研究領域が広範囲に及ぶなどの理由から、まとまった研究へとまとめ上げる上でさまざまな工夫を行うことが必要であった。たとえば、共同研究の場を利用し、フィールド調査を行うなどによって、問題状況を広く的確に把握すること、また問題を具体的に論じるためにモデル・ケースを設定し理論的基礎論と結びつけることなどである。フィールド調査に関しては、カバーできなかった点を研究協力者の助けを借りて補うことが可能になり、またモデル・ケースとして無教会キリスト教を位置づけ集中的な検討を行うことによって、おおむね順調な仕方で研究を進めることができた。 自然神学自体に関しても、環境、科学技術(原子力)、脳科学といったこれまで集中的に取り組んできた研究内容を基礎にできたことも、研究の順調な進展の理由と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、研究成果を集約し研究報告にまとめる段階になる。そのために、これまでの研究を集約する作業を進めると共に、必要な文献調査を的確に実施することがポイントとなる。特に、フィールド調査に関しては、平成26年度と同様に研究協力者の協力によって足りない部分を補うことが必要になると思われる。
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