2013 Fiscal Year Research-status Report
現代韓国「葬墓文化」の変容に関する研究―1990年代以降を中心に
Project/Area Number |
25370071
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中 悟 神戸大学, その他の研究科, 助教 (90526055)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 葬墓文化 / 韓国 / 慰霊・追悼 / 死者 / 死生学 / 墓地 |
Research Abstract |
本研究は、1990年代以降、火葬率の急激な上昇に伴って大きな変容を見せている現代韓国の「葬墓文化」に注目し、宗教学的かつ政治学的な分析を加えることを目指すものである。研究初年度である平成25年度において第一に達成が目指されるのは、(1) 本研究に関連する基礎的資料の収集、および (2) 韓国各地に展開する火葬場や新旧の一般共同墓地、さらには国立墓地などといった、「葬墓文化」関連施設群全体に対する包括的なフィールドワークの実施であった。 上記の2つの課題については、平成25年9月にはソウル特別市、平成26年2月には釜山広域市および大田広域市を拠点として実施した調査旅行の際に、現地での資料収集とフィールドワークを併せて行なった。また、資料収集については、日本においても、年度を通して論文データベースなどを駆使して、オンラインでの情報収集を継続的に蓄積している。 また、こうした調査の成果は、平成25年9月に学会報告の形で部分的に公表したほか、平成25年7月には共著論文、平成26年1月には単著論文の形で公刊されている。さらに同じ平成26年1月には、翻訳論文も公刊された。これらの研究成果は、現在も変容し続けている「葬墓文化」を通して表面化している韓国社会の諸問題(東義大事件、済州4.3事件、自然葬)を取り上げたものであり、現代韓国社会についての最新のケーススタディであり、従来研究の蓄積が少なかった課題に取り組んだ研究成果であると言える。 今後、これらの研究は、現代社会研究として参照するに値するものへと発展させていくことが目指されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた資料収集については現在、おおむね予定通りに進められており、特に問題は生じていない。また、フィールドワークについては、一部で予定通りの訪問調査が実現しなかった調査地が残っており、当初予定されていた調査をすべて行なうことはできなかった。ただし、残されたそれらのフィールドワークについては、平成26年度中に行なうことが可能なものであり、計画の修正は難しいものではない。 こうした理由により、本研究の達成度は「おおむね順調に進展している」と評価できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の課題としてまず挙げられるのは、前年度に実施できなかったフィールドワーク計画の補充的実施である。これについては年度前半の早い時期に行ない、研究計画全体に影響を及ぼさないようにすることとする。 研究推進についてのその他の方策は、下記の通りとなる。 (1) 「葬墓文化」に関する現状の把握: 前年度に収集された資料やフィールドワークの結果をもとに、「火葬率の急激な上昇が火葬場や墓地でいかなる変化として表れているのか」という点について、量的研究/質的研究の両面から学術的にまとまった形で提示する。 (2) 「葬墓文化」をめぐる認識の変化に関する考察: 韓国内で長らく根強い抵抗感があった火葬が時代の趨勢となっていく中で、人々が自らや他者を説得し、納得させたロジックとはいかなるものであったのか。またそこにはどのような社会的背景があったのか。土葬を放棄して火葬を受け入れていく過程を解明し、現代韓国の「葬墓文化」の現状に対する歴史的な理解を与える。 (3) 「葬墓文化の変容」から見る「韓国ナショナリズムの変容」: 上記の「葬墓文化」をめぐる考察を踏まえて、韓国のいわゆる「国家報勲」政策に関して、その意味付けの変容を追うこととする。ここでは、国家報勲処関連の資料を参照しながら、「国立墓地という形を取ったナショナリズムの称揚というあり方が、歴史的にいかなる意味を持ち、現状としてはどのように機能しているか」という問いに対して、一定の回答を与え、なお未解決の論点について整理を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた最大の理由は、予定していたフィールドワークの一部が大学業務との関係で実施できなくなり、そのために旅費および資料収集に関連する諸経費の一部が年度内に計上されなかったためである。 前年度に実施できなかったフィールドワークについては、次年度へ繰り越して実施することとする。可能な限り年度の早い段階で実施することで、研究計画への影響を最小限にとどめることが可能となる。
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Research Products
(5 results)