2013 Fiscal Year Research-status Report
東インド仏教の衰亡とイスラーム台頭の研究―宗教ダイナミズムを中心に
Project/Area Number |
25370076
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
保坂 俊司 中央大学, 総合政策学部, 教授 (80245274)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中央アジア仏教 / ベンガル仏教 / イスラム / 仏教の衰亡 / イスラム神秘主義 / バクトリア / インドネシア仏教 / 華人仏教 |
Research Abstract |
プロジェクト第一年においてはインド仏教衰亡の研究を引き継ぐ形で、まずインド亜大陸の状況、特にイスラムの拡大と仏教の衰亡における時代史料の収集と、分析を行った。また、あらたにベンガル地域の仏教とイスラム、そして東南アジアの仏教とイスラムの関係資料の収集と、同時並行的に得られる情報の処理と関連する成果の発表を随時行った。 もちろん、プロジェクト一年目ということで、体系的な成果ではないが、関連するもの、新たに得られた成果等を海外の学会や国内の雑誌、書籍、さらには研究会で発表した。主な発表先については、華梵大学(台湾)中国社会科学院(中華人民共和国)主催の「第4回両岸跨宗教と文化対話」(台湾)において、インドにおける宗教変容のダイナミズムをシク教、イスラム、ヒンドゥー、仏教との関係を交えて発表した。(2014.4.) シリーズ大乗仏教第10巻の『大乗仏教のアジア』第5章(130~166ページ)において、部分的ではあるが、新たに入手した史料の分析による成果の一部を掲載することができた。また、台湾での発表の折、台湾仏教の状況を調査すことができ、台湾仏教が民衆との深い接点を持っていることを、『在家仏教』において『国立台湾大学病院に仏堂にある不思議」と題して報告した。本件は、東南アジア一帯で活躍する華人仏教研究には不可欠な情報の一つである。また、一般向けには、真言宗高野山八王子別院において5回の「仏教講座」を担当し、研究の成果を踏まえて、主に寺院関係者を対象に、ハイレヴェルの研究成果報告をこなった。その他、現在においても、鋭意資料収集と分析を行っている。特に、中央アジアとインド、ベンガル、東南アジアの仏教からイスラムへの改宗のダイナミズムの連続性を明らかにする糸口が開かれ、従来の同研究を大きく飛躍させることができる視点が、今回の研究で固まりつつある点は、この一年の大きな成果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東南アジア仏教の現状研究は、引き続き調査中であるが、従来考えていたベンガルから東南アジアへの仏教並びにイスラムの伝播との関係性のキーともなる中央アジア出身のスーフィーの存在が、重要であるとの史料的な示唆はあったが、今回その理由を思想史的に想定できる文献を入手し、従来結びつかなかった中央アジア出身者と東南アジアのイスラム伝播の関係と仏教のとの連続性を想定できる見込みがついた。 従来、東南アジアの仏教は、アラブよりの伝播以上に、ベンガルからの影響がはるかに強かったが、その際に調教されたのが、中央アジア出身のスーフィーであった。しかし、実際には多くインド人特に、ベンガル人であった。しかし、彼らが事故を権威化するときに中央アジアそれもブハラあるいは級バクトリア地域の出身を強調するのである。しかも、インドへのイスラムの伝播が、やはり同地域出身のイスラム教とであることが、一種の伝統化しており、東南アジアにおいても、その伝統が生きていたのである。しかし、なぜ、アラブでなく、中央アジアのイスラム、特にスーフィーと呼ばれる集団がそれほどインドのイスラム化に大きな影響を持ったのかは、従来不明であった。しかし、今回イラン仏教(中央アジアのみならず)に関する資料分析によって、彼らの多くが仏教とからの改宗、あるいはそのきわめて近い子孫(子あるいは孫)であり、彼らのイスラム解釈や表現に仏教的な思想背景、あるいは文化が色濃く反映していたということが、インドそして、東南アジアの仏教からイスラムへの変容に大きく貢献したという仮説を新たに得ることとなった。この仮説を得たことで、中央アジア、アフガン、ガンダーラ、ガンジス流域、ベンガル、そして東南アジアの仏教からイスラムへの改宗とその中心的役割を担った、スーフィーの存在への信仰の起源が明らかできると確信した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き資料の検討を行うとともに、本年は思想研究に加え、中央アジアの仏教遺跡を実際にこの目で見、特に、ベンガルから東南アジアへのイスラムの伝播に果たしたとされるスーフィー伝説を整理しつつ、その背後にある仏教的要素との連続性を明らかにする。 以上の研究は、いわば本研究プロジェクトにおいては地理的には、周辺地調査ということになるが、実際には核心部をなすものと考える。従来申請者は、この仏教とイスラムの関係性の接点を見いだせなかったのである。それ故に、暴力的な改宗や利害打算的な改宗要因に注目してきたが、ここにおいてさらに、思想的な近似性という従来のインド仏教衰亡、さらには仏教圏へのスーフィーによるイスラムの伝播という現象の思想的、文化的そして歴史的、さらに言えば文明的な連続性を想定できることとなった。ゆえに、今年度は、中央アジア、バングラディシュ、東南アジアと機会が許す限り現地に出かけ、調査したい。もちろん文献研究は、積極的に行う。また、その成果については、すでに各方面からの依頼もあり発表の機会を持っているので、積極的に公にしてゆきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マレーシアなどに調査旅行を計画していたが、中央アジアでの調査研究を、前述のとおりの理由で優先する必要が生じた。他の研究との関係で、予定した機関に、マレーシア墜落事件などがあり、調査を見合わせた。 中央アジアへの調査を8月あるいは9月に実施しするために、これを用いる。またベンガルのコミュラ地域の仏教遺跡調査や、考古学局での資料収集に用いる。
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Research Products
(3 results)