2015 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ神秘思想のマリア論―処女降誕をめぐるマリア図像と神の子の誕生論―
Project/Area Number |
25370077
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田島 照久 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (50139474)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ドイツ神秘思想 / 宗教哲学 / 中世哲学 / 図像学 / マリア論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では一方で、ドイツ神秘思想の「魂の内における神の子の誕生」の教説テキストが聖母マリアの処女懐胎という枠組みに沿って分析解釈される。また他方では中世の民衆の願望を映し出している「受胎告知」の表出例の分析を通じて、類型化された図像を構成している個々のモティーフを探り出し、神学的な解釈と照らし合わせ、一般的理解の文脈を再構成する。その両者を比較校勘することによってドイツ神秘思想の「魂の内における神の子の誕生」のメッセージの独自性を浮き彫りにすることを目指すものである。 研究計画最終年度に当たる平成27年度は、これまでの図像学領域研究の知見に基づき、ギリシア教父以来の伝統であるテオーシス(人間神化思想)を「魂の内における神の子の誕生」として受け止め、「処女懐胎」というマリア論の枠組みで構築していったドイツ神秘思想の救済論を、エックハルトの「本質的始原論」の内に定位することを試みた。さらに永遠の場である「始原」がトリアーデ構造(神の存在、子の誕生、世界の創造)をもって理解されていること明らかにした上で、「魂の内における神の子の誕生」が生起するとされる「魂の根底」が離脱の場として「始原」のトリアーデ構造を映し込んでいるという解釈をこれまでの研究結果としてまとめ上げることができた。とくにエックハルトのラテン語著作集、およびドイツ語著作集の各テキストを精査した結果、「魂の根底」が「神の根底」を映しこんでいるというエックハルトの理解が、伝統的な「imago Dei論」を踏まえた上で、さらに独自に理解されたエックハルトの「imago Dei論」に基づいているこが判明した。 本年度も「受胎告知」図像の映像資料および研究論文等の資料を、とくに作例が集中しているイタリア各地で収集し、そのイコノグラフィー的解釈をまとめることに専念することができた。
|
Research Products
(2 results)