2014 Fiscal Year Research-status Report
明治維新期の神仏分離政策の波及と宗教都市伊勢の神仏分離
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25370078
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Research Institution | Kogakkan University |
Principal Investigator |
河野 訓 皇學館大学, 文学部, 教授 (20329907)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神仏分離 / 神仏習合 / 伊勢 / 宇治山田 |
Outline of Annual Research Achievements |
伊勢市(宇治・山田)の祠堂や神祠の基礎データとして『小祠拾』所載の祠についてデータ化し、地区別及び種類別(山神、天神、稲荷など)に整理し、所在確認のための現地調査を随時行った。 諸文献に記される明治維新時の諸藩における神仏分離の断行の実情確認のため各地の諸社寺や戸隠山麓や白山麓、国東半島、十津川の神仏習合と神仏分離について調査した。対象となった神社は白山中居神社、白山長瀧神社、堀越神社(天王寺)、今宮戎神社、大鳥神社、往馬神社、上野東照宮、地主神社、宇佐神宮、宗像大社、太宰府天満宮、熊野速玉大社等、寺院は善光寺、興福寺、清水寺、題経寺、大師堂(郡上市石徹白)、長滝寺、愛染院(天王寺)、四天王寺、富貴寺、両子寺、当麻寺等であり、各社寺特有の神仏習合と神仏分離の実態を調査した。また、収集した資史料により伊勢神宮、立山、三井寺、清水寺と地主神社、善光寺、春日大社と興福寺、神護寺、四天王寺と今宮戎神社、大鳥神社、寛永寺、戸隠神社、当麻寺等における神仏習合と神仏分離について整理した。今後は調査した他の社寺についても進める予定。 三重県庁所蔵「明治元年 寺院建物絵図並田畑石高帳」と明治20年前後に作成された三重県立総合博物館所蔵「度会郡宇治山田市の各町の図」を整理・分析し、寺院境内とその周辺絵図のデータ化を行った。また、『小祠拾』『勢陽五鈴遺響』『勢陽雑記』『神三郡神社参詣記』のうち、宇治・山田についていまだデータ化できていない箇所をデータ化した。 これまでの研究に新たな知見を加え、富士山・立山・白山の神仏習合と神仏分離に関して「三名山の神様・仏様」、日本における神道と仏教の交渉と比較対照できる中国における儒教・仏教・道教の相剋の歴史について「南北朝時代の三教の対立と融和」、伊勢における神仏習合と神仏分離について「伊勢の聖なる空間Ⅰ「神仏習合と伊勢」」等の研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
伊勢市内の神祠等の所在地については『小祠拾』に記載されているものについては地区ごと、種別ごとに整理ができた。そのうち現存するものについては現地調査を行ってきた。 古地図のデジタル資料化については明治20年前後に作成された三重県立総合博物館所有「度会郡宇治山田市の各町の図」をデータ化でき、三重県庁所蔵「明治元年 寺院建物絵図並田畑石高帳」と併せて用いることにより、地域における寺院の存続状況をさらに明確にできた。併せて『小祠拾』『勢陽五鈴遺響』『勢陽雑記』『神三郡神社参詣記』など伊勢の江戸時代の伊勢の状況を記した文献についてデータ化を進めた。 明治維新の神仏分離に関しては個々の社寺に残る文書によりその過激さ、穏健さを窺い知れる。神仏習合の状態にあった社寺や地域の神仏分離後の状況を諸社寺や現地で実地調査することで知り得た。現地調査による資史料などをもとに近畿地方を中心として各地に現存する大きな社寺を中心として慶応4年(1868)当時の状況が整理できた。また下山仏といわれる神仏分離まで山上に祀られていて神仏分離を機に山から下ろされた仏像等について、題経寺や大師堂等で現地確認を行った。 富士山・立山・白山の神仏習合と神仏分離に関して「三名山の神様・仏様」、日本における神道と仏教の交渉と比較対照できる中国における儒教・仏教・道教の相剋の歴史について「南北朝時代の三教の対立と融和」伊勢における神仏習合と神仏分離について「伊勢の聖なる空間Ⅰ「神仏習合と伊勢」」等の研究発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度も引き続き、関係資料の調査・収集、収集資料の整理と解読、研究発表・情報の交換を行ったうえで、研究成果の公開の一環として報告書(含CD版)の作成を行う。 収集した関係資料については、神社、仏堂、祠堂、神祠関連情報のデジタル画像化を進め、デジタル画像化した紙地図に寺社等及びの情報をマッピングし、河野科研「宗教都市伊勢における神仏分離と寺院・神祠の景観変化に関する歴史的研究」(平成22~24年度)に新たな研究成果を加え、明治維新前後の宇治・山田の景観を画像により復元する。 報告書には平成25年度及び26年度に整理した諸社寺や諸地域、諸山岳に関する諸資料に加え、新たに実地調査した社寺等の神仏習合と神仏分離に関する資料等も整理し、追加・整理する。また、神仏分離政策の波及について、各地の社寺における神仏分離の時期はその程度などを整理し、当初の目的のひとつである伊勢における神仏分離と諸藩の行った神仏分離との比較も試みる。 研究の成果を学会(日本宗教学会)などで発表し、研究成果のまとめにあたっては専門的な知識を有する研究者や研究領域が近い研究者、伊勢市内の郷土史家との情報交換を行い、裏づけ、確認を行う。
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Causes of Carryover |
収集資料のデータ化に大学院生のアルバイトを使い謝金として支出する予定であったが、予定していた院生が早期に退学してしまい、次の相応しい院生を見つけるのに手間取ったため。 また、データ化する原資料の整理が滞り、データ化への取り掛かりが遅くなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
報告書に間に合うように27年度は早期に原資料の整理を進める予定であり、計画的に執行する予定である。
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