2015 Fiscal Year Research-status Report
サイボーグ思想の「原型」―1920年代のイギリス科学思想界の分析
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25370091
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
柴田 崇 北海学園大学, 人文学部, 教授 (10454183)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | サイボーグ / 技術思想 / イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、サイボーグ思想の「原型」を1920年代のイギリスに求め、「原型」からの変異として今日のサイボーグ論を検証し、サイボーグ技術、および新しいサイボーグ論を展望するところにある。平成27年度は、今日のサイボーグ論の「原型」となったJ・D・バナールの思想における科学説が、後続の議論にどのように継承されているかを解明する作業に注力した。その結果、バナールが、熱力学第二法則から逸脱し、エネルギーを集約する能力を備えた知的主体として人間を捉えていた事実、コンピューターの技術革新が進み、サイボーグ論における人間の知的特権が剥奪されていく過程、そして、この過程にあって人間の特権を信奉し続ける一派としてM・モアらの楽観的なエクストロピア二ズムが位置付けられることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サイボーグ論の「原型」の特定から、オーソドクスな議論の問題系を解明する作業はほぼ完成し、この論点に係る成果についてもまとめたが、まとめの過程で、従来の議論とは別系統のサイボーグ論の存在が確認できたため、その評価を含めて本研究を完了することを決定し、一年間の延長を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
今日のサイボーグ論の主流は、技術による人間機能の「拡張」の概念に依拠するバナールの思想を「原型」とする。これに対し、A・クラークは、Natural-born cyborgs(2003)で、「拡張」とは別系統の身体論に基づいてサイボーグ技術を考察している。A・クラークの議論を精査し、本年度中に、新しいサイボーグ論の射程を明らかにする。
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Causes of Carryover |
完成年度までの成果をまとめた際に、本研究課題の一部として検証すべき新しい課題が発見できたため、一年間の延長を選択した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
関連書籍、および使用の購入、調査、発表に係る支出に充てる。
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