2016 Fiscal Year Annual Research Report
Clarifying the archetype of the cyborg concept: Linking 1920s British scientific thought with current understandings
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25370091
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
柴田 崇 北海学園大学, 人文学部, 教授 (10454183)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | サイボーグ / エンハンスメント / J・D・バナール / A・クラーク / extension |
Outline of Annual Research Achievements |
1920年代後半のジョン・D・バナールによる未来予測は、身体器官の機械的代替による機能の「拡張」を謳い、今日のサイボーグ論の源流となった。バナールが機械に対する人間の知的優位を確信していたのに対し、バナールを参照した者たちは、1960年代のコンピューターの普及、クラウドとつながったAIの登場の中で、人間の優位が崩壊し、機械にその地位を取って変わられる通過点としてサイボーグ化を論ずるようになった。 「拡張」の系統がこのような人間と機械の相剋の構図から抜けられないのに対し、別系統の「延長」からサイボーグを論じたのがアンディ・クラークである。とはいえ、「extension」という概念への着目を出発点にする本研究は、二つ以上の系統からのサイボーグが論じられている事実を指摘することを目的とするものではない。ほとんど全てのサイボーグ論は自らの系統に自覚的でなく、クラークもその例外ではない。この事実の指摘とともに各系統の価値を明確にし、夫々の議論の可能性を最大限に引き出す作業の端緒を開いたことが、本研究の意義と言えよう。 加えて、本研究では、相剋に代わる「共生」の構図で人間と機械の分業を考える作業にも緒が付いた。AIには人間の知性とは質的に異なる「知性」がある。このことは、人間同士の協同で不可能だっただけでなく、人間には思考さえできなかった知的営みが、機械との協同で可能になることを意味する。サイボーグ化を完全な機械化への過渡的通過点と見做すのではなく、人間と機械による相補的かつ最も創造的な「共生」体と見ることで、新しい、建設的なサイボーグ論が始まるものと考える。
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Research Products
(1 results)