2014 Fiscal Year Research-status Report
考証学・言語の学、そして近代知性 - 近代的学問の「基体」として漢学の学問方法
Project/Area Number |
25370093
|
Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
竹村 英二 国士舘大学, 21世紀アジア学部, 教授 (80319889)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 貴之 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (20251499)
江藤 裕之 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (70420700)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 儒学 / 清代考証学 / フィロロギー / 文献研究 / 国際研究者交流 / 日本思想史 / 中国学 / 原典批判 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度においては当初の計画を上回る進展をみせた。まず、本科研代表者が申請代表となり ‘Philological and exegetical studies of classical texts in 18th and 19th century Japan: A comparative approach’ との演題での研究報告をヨーロッパ日本研究協会(EAJS、欧州最大の日本研究学会)に応募、採択され、2014年8月末に研究分担者とともに報告(言語:英語)、直後の9月初旬には ‘Confucian and other sources of evidential research in East Asia’ とのテーマでケンブリッジ大学にて国際研究集会を海外研究協力者である P.F.Kornicki ケンブリッジ大学教授とともに主催、同会では18世紀日・中の儒者における文献考証研究の方法的進展に関する発表、その近代日本の歴史学発展との関連についての発表(言語:日本語/英語)がなされた。ここでの報告はほぼすべて研究成果として結実しているのは「業績」欄を参照されたい。さらには同月(9月)28日には、代表者も研究協力者をつとめる東京大学東洋文化研究所にて会い、のち本科研の研究協力者となった B.A. エルマン プリンストン大学教授(2014.4 - 2015.1 東京大学東洋文化研究所客員教授)を招聘しての研究会を開催、清代儒者の考証学、とりわけ江聲、王鳴盛、閻若キョらの『尚書』研究について有用なご報告をいただいた。エルマン教授の本科研への参画により、その清代考証学的研究に関する豊饒な知見が受容されたのみならず、同教授の同僚である A. Grafton(プリンストン大)、S. Pollock(コロンビア大)、H. von Staden(高等研究院)、M. Witzel(ハーバード大)D. Lurie(コロンビア大)らの研究成果も本科研の研究者において受容されることとなり、ここに、本年度において鋭意推進してきた国際的学術ネットワークの基盤が飛躍的に拡充した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述のように最も権威のある国際学会、国際研究集会における報告、研究者交流を実現したのみならず、それを契機により高度で幅広い国際的研究交流が実現できている。即ち、本年度開催のプリンストン国際研究会合は、これまでの18世紀日中両国の古典テクスト研究と欧州フィロロギーとの比較研究の進展の結果拡幅したものであり、前年度までに蓄積された研究交流、就中ケンブリッジ大P.F.Kornicki 教授、プリンストン大学 B.A. Elman 教授らとの研究交流により実現可能となったものである。プリンストンにて交流を本格的に開始する Grafton 教授は 15~18世紀西欧における学問発展史の専門研究者で、とくに Joseph J. Scaliger, Isaac Casaubon らにおいて、それまでの修辞・文学を中心とする古典・歴史から、いかに「探究」、客観的「調査」を主軸とする「学問」が発展したかの様相に関する膨大な著述を有する。A.Grafton の長年の共同研究者である G. Pomata, N Siraisi らは、16~18世紀における法学における文献批判の発展、医学における臨床的・解剖学的研究手法の発展がいかに歴史研究を含む人文学の研究「手法」を変容させたかについての豊富な専門研究を有する。Pollock 教授はサンスクリットとその周辺領域への伝播の研究を主とし、西欧、中国、インド文明圏の文献研究の本格的比較検討を実践、編著書を上梓している。これらの諸研究はすべて、17世紀~19世紀前半の日本における文献研究、原典批判の勃興・発展の比較対象として/それを照射する重要な手がかりとして有用であり、とくに Grafton による、Scaliger や Casaubon において ‘Canon’ とされる文典が「考察対象化」、“客観化”される様相に関する研究は、18世紀日本儒者における原典批判との比較検討において極めて有用な知見を提供する。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度より海外研究協力者となる Grafton 教授はすでに、16世紀末~17世紀前半における高度に体系化された文献研究の到達に関する研究を多数上梓している。同教授の研究は、とくにこの時代の聖書解釈における、ヘブライ語、ギリシャ語テクストの詳細な再検討、年代記の再検証などを通じた詳密な原典批判の具体相を呈示する。これに比して、18世紀日本儒者にとって二重の意味で「外国語」であった古代儒学テクストの研究の特徴はどのようなものであったか。これら両者の特質、そして研究の水準の比較は本科研にとって極めて重要である。本年度は、上記の米国の研究者の成果を十全に取り入れ、また、それらの日本思想史研究者、中国学研究者の間での情報の共有を目指す。一方、ひきつづき18世紀日本儒学者の文献研究、とくに中井履軒、山本北山、大田錦城、さらには松崎慊堂、狩谷エキ斎らによる中国古典テクスト研究の実相を明らかにし、これと、清代考証学、とくに乾隆・嘉慶の考証学の達成との相同性、異なる点を考察する。幕末考証学の学問特性の特定、清代の考証学から継承したもの、異なる点の析出は本プロジェクトの枢要となる。これらの軸で各々すすめる研究の比較総合は、偏に、分野の異なる研究者、とりわけ海外の大学に拠点をもつ西欧文献学研究者との恊働をもってはじめて可能となる性質の研究である。この実現にむけ、上述の海外の主要大学の研究者との交流、共同研究を推進、これもって、(a) 日中漢学の特性の比較を常に念頭に置きながらの思想史的比較研究を推進し、それを、(b) 西欧のフィロロギーと研究手法の次元の個別具体的比較検討し、(c) これらをもって研究をすすめる「主体」の国際化の促進、さらには研究「手法」、そして「対象」の両面における国際性の確保を目指す。
|
Research Products
(13 results)