2015 Fiscal Year Research-status Report
考証学・言語の学、そして近代知性 - 近代的学問の「基体」として漢学の学問方法
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25370093
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
竹村 英二 国士舘大学, 21世紀アジア学部, 教授 (80319889)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 貴之 国際日本文化研究センター, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (20251499)
江藤 裕之 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (70420700)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日本思想史 / 文献研究 / 江戸時代 / 儒学 / 国際比較 / 歴史学と社会科学 / 古典テクスト / 前近代と近代 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25~26年度より鋭意推進してきた国際的学術ネットワークを基盤に学究活動を継続した結果、平成27年度においては当初の計画を上回る進展をみせた。まず特記したいのは代表者による単著の学術書(『江戸後期儒者のフィロロギー - 原典批判の諸相とその国際比較』、「業績」欄参照)の刊行である。本科研事業において代表者は、江戸中~後期の儒者の古典テクスト研究の実相についての継続的な研究を続ける一方、B.A.エルマン教授(プリンストン大学)、P.F.コーニツキー教授(ケンブリッジ大学)、江藤裕之教授(東北大学)らと文献研究の国際比較を推進、さらには史学史、歴史学研究と諸理論の関係に造詣が深い E.ドマンスカ准教授(ポツナン大学)らの知見も適宜採入しながら、文献研究の比較考察とその方法論的拡幅を目指してきたが、代表者によるこの単著、ならびに平成27年度内に上梓された3本の論文(「業績」欄参照)はこれらの知見も反映させた本科研研究の集大成である。 平成27年6月19日-20日には江藤教授(研究分担者)の本務校(東北大学)にて研究会/講演会を開催、コーニツキー教授、江藤教授にご報告いただいた。8月に予定されていたプリンストン大学での国際研究会合は代表者の病気のため2017年度に延期された(「今後の研究の推進方策等」参照)が、2017年2月5日には E.ドマンスカ教授を迎えて歴史学と社会諸科学の方法との有機的接合の可能性についての講演会を代表者が研究協力者をつとめる東京大学東洋文化研究所にて開催、あわせて突っ込んだ議論のための研究集会も行なった。同年2月16日には古典テクスト研究の伝播の様相の研究の一環である中心語―周辺語関係研究の可能性、とりわけサンスクリット、漢語とその周辺語の関係に関する比較研究の可能性について、S. ポロックの研究なども引照しながらの検討会を、再度来日されたコーニツキー教授と行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究開始当初より文献研究の国際比較のための知見と方法論の拡幅をすすめ、とくに平成26年度にはこの分野の研究において海外で最も権威のある国際学会(ヨーロッパ日本研究協会 - EAJS)にて報告、さらにはケンブリッジ大学にて国際研究集会を開催し(昨年度「実施状況報告書」参照)、高度なレベルの国際学術交流を2年間にわたってすすめるなかで新たな学術ネットワークが構築された。そしてそれらが、著書、論文の具体的なかたちに結実したのが、平成27年度である。 本科研では、(1)外国人日本研究者との交流を通じ、日本人の日本史、日本思想史研究者に稀有な分析視角、方法論を適宜接合・交錯させること、(2)日本人による日本研究に呈出される史料的、実証的優位性の海外への発信、の二点を軸とする、表層的ではない国際交流を目指した学究活動を継続してきたが、上記の業績はまさにその産物である。とりわけ、平成27年度の業績には、上記のケンブリッジ大・コーニツキー教授、のみならず EAJSでの報告後の討議より交流があるオランダ・ライデン大学、スイス・チューリッヒ大学の日本研究者らとの有機的交流を通じて得られた知見が適宜反映されている。 また、平成26年度まで行ってきた江戸中ー後期の儒学テクスト研究にみられる研究手法の特性の研究とその国際比較に加え、平成27年度には、儒学文献研究手法の特質が明治(近代)の歴史学の方法的発展に与えた影響に関する研究が開始された。これは、研究手法の相違性に関する実証研究に、史学史研究の知見、とりわけ方法論の進展に関する研究を大幅に導入した研究を交錯させながら遂行しているものである。
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Strategy for Future Research Activity |
過去3年間の本科研の活動は、概ね当初の計画を上回る進展をみせているが、唯一、平成27年夏にプリンストン大学のB.A.エルマン教授と共同で同地にて開催を予定していた'Princeton-Tokyo International Philology Workshop'が代表者の病気により延期されたのが悔やまれる。しかしこれについては、エルマン教授と彼のプリンストン大学の同僚2名、さらには S.ポロック教授らも含めた参加予定者との協議の結果、2017年度中に開催することで合意が得られている。既に同国際会合に使用予定だった科研助成金の平成28年度における使用の認可も得ており、実施したい。 また、江戸後期に大いなる発展をみた儒学テクストの文献研究手法の近代歴史学への方法的影響の研究においては、通常の思想史学的・歴史学的研究のみならず、社会科学の方法の有機的導入が有用であるが、これについては、代表者が理事(Bureau Member)をつとめる国際学会、歴史学と歴史理論学会(International Commission for History and Theory of Historiography)の同僚理事2名、ならびに前出のドマンスカ准教授(同学会会長)らとの共同研究をつうじての方法論の編み上げを目指したい。 いうまでもなく本年度は本科研の最終年度である故、上記国際会合にて得られた知見も含めた研究の総まとめを行う。同時に、次期科研研究の下準備として、歴史学と社会科学の方法的融合をもっての研究手法の策定/構築にも取り組みたい。
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Causes of Carryover |
代表者は本務校の専任教授のほか東京大学東洋文化研究所にて研究協力者もつとめるが、2014年4より同研究所に客員教授として滞在していたB.A.エルマン教授(プリンストン大学)と同時期より文献研究の国際的比較を推進し、平成27年8月に同教授と共同で'Princeton-Tokyo International Philology Workshop'を同地にて開催する計画をたてた。この国際研究集会には、エルマン教授のほか、彼のプリンストンにおける同僚で西洋古典テクスト研究の専門研究者2名、さらにはコロンビア大学教授でサンスクリット研究の碩学 S.ポロック教授らの参加が予定されていた。また、日本から儒学テクストの文献研究にも造詣が深い町泉寿郎教授らの参加も募り、開催する予定であった。しかしこれが代表者の病気により延期と相成り、協議の結果、平成28年度中に開催されることが企画された。助成金の繰越しが承認されたので、実施する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
まず上述の国際研究集会(平成29年3月に開催予定)への予算配分であるが、海外から東京に招聘予定の研究者3名の交通費・宿泊費として各々20万円ずつ、計60万円の支出(為替変動による増減の可能性あり)を見込む。また、同国際集会には国内からの参加者も複数募る予定である。具体的には、二松学舎大学、中央大学、明治大学、東京大学など東京圏の大学から計5名、のみならず京阪地区ならびに東北が拠点の専門研究者も4名招聘する予定であり、これには計30万円ほどの支出を見込む。その前の平成28年9月にこれまで3年半の研究の綜纏めと成果論集の構想を討議するための研究会合の開催を予定しており、これには仙台、京都からの参加者の旅費の拠出が必要であり、合計約20万円ほどを見込んでいる。これとは別に代表者の ICHTH 理事仲間であるトルタローロ教授(東ピエモンテ大学)と史学史関連の研究会を計画中であるが、予算に余裕があればこれにも充当したい。
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Research Products
(21 results)