2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370101
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
遠藤 徹 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (10313280)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 楽律 / 律学 / 音律 / 江戸時代 / 雅楽 / 十二律 / 近世 |
Research Abstract |
本年度は各地に散在している楽律学関係書の伝本調査と収集を中心に研究を進めた。近世の楽律学関係書は大名家が保持していた場合が多いため、調査は仙台藩伊達家伝来資料(宮城県図書館、2013年9月)、紅葉山文庫伝来資料(国立公文書館内閣文庫、2013年12月)、尾張徳川家伝来資料(名古屋市蓬左文庫、2014年1月)および東京国立博物館(2013年9月)などで行い、中島高雲『十二律正義』、蟹養斎『制律捷法』、『楽律全書』(荻生徂徠校閲)、太秦兼陳『万楽和漢考』などの複写、撮影を行った。 また近世の楽律学の展開の背景をなすとともに、相互の影響が注目される近世における雅楽の伝承の実態について、箏の下壹越調、和琴の唐楽曲への適用の問題を中心に、紀州徳川家伝来楽譜(国立歴史民俗博物館蔵)から分析を試みた。前者は現行にはない壹越調の別の調絃法で通常の調絃より低音域を用いるもの、後者も和琴は元来国風歌舞等に用いるものであるため現行伝承にはないものである。いずれも十二律の基本をなす壹越の意義について、五行などの伝統的な解釈をふまえた上で、調絃が工夫されているものと考えられた。基準音(古代中国では黄鐘、日本では壹越)の意義は近世楽律学の中心をなす問題でもあるので、相互の関係が今後の課題となる。 その他、楽律に通じた人物に関する逸話を近世の随筆類から拾い上げる作業を行った。東寺宝蔵の唐製の十二律及び平調板の律を言い当てた浅利検校の逸話(「秦山集」)など、当時は楽律書を著さないまでも律に通じたとされる人物は多数存したことがうかがえ、こうした側面も楽律学の展開を考える上で見落とせないものと考えるに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していた楽律学関係の資料調査は、ほぼ実施することができ、必要な資料の複写・撮影もほぼ行うことができた。箏の下壹越調調絃、和琴の唐楽曲への適用の問題は、当初の計画にあったものではないが、儒学者などで楽律学に携わった者の多くは、当時の雅楽の伝承を学んでおり、一方、楽家もそうした儒学者等の影響を受けて中世までとは異なる楽理の説明を行う傾向が認められるので、楽律学関係書を読んでいく中で必然的に浮上してきた課題である。 収集した資料については予定通り精読を進めるとともに連携研究者等と定期的に検討会を行っているが、今年度は学会などで発表するには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に引き続き楽律学関係書の調査収集を行う。その際、儒学者、和算家にとどまらず俗楽関係者にも目を広げるとともに、楽家や声明家の近世的な動向にも注目する。声明家では天台宗で魚山叢書を編纂した宗淵、楽家では『楽家録』を著した安倍季尚から5代後の安倍季良等が注目に値する楽律研究を行っており、両者の関連資料を中心に調査収集を行う予定である。 収集した資料については前年度と同様に精読を進めるとともに連携研究者等と定期的に検討会を行い、研究会や学会などで発表する機会を設けたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
資料整理支援の雇用を春休みに行い、年度をまたいだため一部が次年度に持ち越されることになった。 資料整理支援の謝金で使用する。
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Research Products
(1 results)