2014 Fiscal Year Research-status Report
自作品の上演における演出家、ドラマトゥルクとしてのブレヒト
Project/Area Number |
25370104
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
市川 明 大阪大学, 文学研究科, 名誉教授 (00151465)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 異化効果 / 叙事詩的演劇 / チューリヒ劇場 / 教育劇 / ベルリーナー・アンサンブル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主要な課題は、ブレヒトが亡命中に書いた劇作品の世界初演がどのように行われたのか、特にチューリヒ劇場での四作品の世界初演について探ることだった。『肝っ玉おっ母とその子どもたち』や『プンティラ旦那と下僕マッティ』などの上演はブレヒトが目指した叙事詩的演劇には程遠く、感情同化的な俳優術が大きな妨げになっていたことを明らかにした。ブレヒト自身がチューリヒに滞在し、演出にかかわった1948年のプンティラ上演における俳優とのさまざまな確執についても探った。12月の阪神ドイツ文学会のシンポジウムで「抵抗の美学―ブレヒトとチューリヒ劇場1933-1948」のタイトルで報告をした。 黄金の20年代と言われた1920年代のベルリンの演劇が実践家、演出家としてのブレヒトに多きな影響を与えていることを、ピスカートアの演劇との関連から探った。ピスカートアの劇場・舞台構造の改革や映画の使用などが、ブレヒトの劇作法だけでなしに、俳優術や演出法の転換をもたらしたことを『肝っ玉』の上演などをもとに分析した。2月に「ブレヒトの俳優術・観劇術」のタイトルで講演し、異化効果の問題を論じるとともに、20年代のベルリン演劇が1933年以降、チューリヒ劇場にシフトしていった様子についても解説した。『イエスマン・ノーマン』に始まった教育劇研究は未完の断片『ファッツァー』の翻訳・上演につながり、ブレヒトの演出家としての原点を探る研究に発展した。開いたドラマ、閉じたドラマの観点から『ファッツァー』とゲーテの『タウリスのイフィゲーニエ』の比較研究も行った。異化効果を喜劇的な距離化という観点から考察し、ベルン大学とローマ大学で講演を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スイスへの調査は順調に進み、ブレヒトとチューリヒ劇場の関係については、12月に学会のシンポジウムで報告し、今年度も、学会でのシンポジウムで継続研究の報告をする予定である。ベルリーナー・アンサンブルでの演出家・ドラマトルクのブレヒトにつなげる素地は十分にできたと思う。
|
Strategy for Future Research Activity |
10月に日本独文学会のシンポジウムでブレヒトとチューリヒ劇場の関係について、継続した研究の成果を発表する予定である。その際新たなテーマとしてクールでの『アンティゴネ』上演と、演劇論『小思考原理』を考察する。今年は2度ベルリンに調査・研究に出かけ、ブレヒトとベルリーナー・アンサンブルの関係について探る。
|
Research Products
(10 results)