2015 Fiscal Year Annual Research Report
自作品の上演における演出家、ドラマトゥルクとしてのブレヒト
Project/Area Number |
25370104
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
市川 明 大阪大学, 文学研究科, 名誉教授 (00151465)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ブレヒト / ベルリーナー・アンサンブル / 上演モデルブック / 叙事詩的演劇 / 演出家・ドラマトゥルク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主要な課題は、ブレヒトのベルリーナー・アンサンブルでの演出家・ドラマトゥルクとしての活動を探ることにあった。ただ最終年度であるため、包括的、横断的に研究課題を探ることにした。 第一に、演出家という場合、ブレヒトにとって演劇上演だけのものではなく、ラジオ放送劇のディレクターや映画監督をも含めた総合的な概念であることを明らかにした。もともとは放送劇として構想された教育劇『リンドバーグたちの飛行』や、共同演出で製作した映画『クーレ・ヴァンペ』を通して演出家ブレヒトの姿を追った。ブレヒトは独自のラジオ理論を発展させ、演出家として「演出総譜(スコア)」のようなものを作っている。映画の集団作業とともに演出家ブレヒトの活動実態を探った。 第二に、ブレヒトのベルリーナー・アンサンブルの活動にとって、1948年のスイスでの二つの演出、『プンティラ旦那と下僕マッティ』(チューリヒ劇場)、『アンティゴネ』(クール劇場)が不可欠で、上演の『モデルブック』を作る出発点となったことを明らかにした。出演女優のレギーネ・ルッツ氏(ミュンヘン在住)から、インタビュー資料の提供を受けた。8月にチューリヒ、ベルンに資料収集に出かけ、10月の日本独文学会のシンポジウムで「演出家、ドラマトゥルクとしてのブレヒトとスイス」のタイトルで報告した 第三に、三つのモデルブック、チャールズ・ロートンとの『ガリレオ・ガリレイ』の共同作業、『アンティゴネモデル1948』『肝っ玉おっ母とその子どもたち』を詳細に検討した。5月にベルリンで開かれた演劇祭「演劇の出会い」にも参加して、ブレヒト演劇が現代にどのように受け継がれているのかを探った。これらの成果は本年6月にオックスフォード大学で開かれる国際ブレヒト学会で報告の予定である。欧文の報告書"Brechts Thearer global"を3月に出版した。
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