2015 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における楽器産業の発展メカニズムと音楽文化―鈴木ヴァイオリンを中心に
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25370107
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Research Institution | Aichi University of the Arts |
Principal Investigator |
井上 さつき 愛知県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (10184251)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヴァイオリン / 鈴木政吉 / 楽器産業 / 近代日本 / 音楽 / 博覧会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦前に日本を代表する一大産業へと発展した洋楽器製造に着目し、鈴木ヴァイオリンを事例として、その発展メカニズムと音楽文化とのかかわりを読み解き、さらに、国際的な文脈に置き直す試みである。 平成26年に中央公論新社から単行本『日本のヴァイオリン王ー鈴木政吉と幻の名器』を刊行し、それに合わせてレクチャーコンサートや講演等を数多く実施したが、平成27年度もその流れは続いた。代表例として、宗次ホール4回シリーズで始まった「幻の政吉ヴァイオリンでたどる名古屋の知られざる音楽史」が挙げられる。平成27年5月には「名古屋市公会堂が新しかった頃の名演奏家たちのコンサート」というテーマで、同年11月には「ヴァイオリンで邦楽曲ーー明治大正の音楽会」というテーマでレクチャーコンサートを行った。どちらも盛況で大きな関心を集めた。紀要論文としては、畑野小百合氏との共著で、「ベルリン高等音楽学校への鈴木ヴァイオリンの寄贈」の続編を執筆、掲載した。 国内外の調査としては、ロンドンの大英図書館で1910年の日英博覧会における鈴木政吉の出品等について調査を行った。また、国内では、東京での資料調査や大阪の三木楽器での調査に加え、札幌で天塩産のアカエゾマツの利用に関する調査を行った。これは、奈良文化財研究所の大河内主任研究員の年輪年代学研究により新たに鈴木製のヴァイオリンにこの木材が使われていたことが判明したことによる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、平成26年の単行本出版により前倒しに進んでいたが、平成27年4月に大学の芸術創造センター長に就任したことから、研究に使える時間が激減し、国内外の調査を思うように行えなくなった。 一方、レクチャーコンサートや講演を通じて、一般への啓蒙活動は進展し、さらには鈴木政吉を主人公とした単発のテレビドラマが作られるに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は27年度までに実施できなかった国内外の調査を行い、それを踏まえて、研究を再度見直す。単行本の記載の修正や追加を行い、最終的な結論とする。宗次ホールで開催しているレクチャーコンサートのシリーズに関しては、第3回、第4回を実施する。
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Causes of Carryover |
芸術創造センター長に就任し、研究時間が減少し、特に国外での調査にいく時間がとれなくなったため、その分の費用が残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国外調査を実施するほか、研究を総まとめするために必要な資料収集費等に当てる。
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Research Products
(2 results)