2014 Fiscal Year Research-status Report
ニコライ・メトネルのピアノ・ソナタの批判校訂版楽譜の作成
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25370115
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高久 暁 日本大学, 芸術学部, 教授 (20328769)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ニコライ・メトネル / 20世紀の音楽 / ロシア音楽史 / 楽譜作成 / 批判校訂版楽譜 / 在外ロシア人音楽家研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
①ピアノ・ソナタを中心とするメトネルのピアノ作品の初版楽譜(現在では絶版で入手困難)を入手した。 ②平成27年2月にカナダ国立図書館・アーカイヴス(The National Library and Archives of Canada)に滞在し、北米大陸におけるメトネルの最大の支援者だったケベックのピアニスト・作曲家、アルフレッド・ラリベルテAlfred LaLiberte及びラリベルテを介してメトネルに傾倒した作曲家エクター・グラットンHector Grattonのアーカイヴを調査した。アーカイヴ所蔵資料のなかから《ロマンティックなソナタSonata Romantica》op.53-1、《ソナタ・ミナチオーザSonata Minacciosa》op.53-2、《ソナタ・イディールSonata Idyll》op.56の一次資料(スケッチ、下書き、版刻用手稿譜Stichvorlage)を精査し、帰国後にこれら3作品の批判校訂版楽譜の原稿及び校訂報告を作成した。op.56は極めて資料に乏しく、若干のスケッチと初期の下書きが存在するのみであるが、それらの資料はop.56の成立過程に関して重要な示唆を与えるものであった。 ③イギリスにおけるメトネルの弟子でメトネル作品の優れた解釈者だったピアニスト、エドナ・アイルズの未発表録音がカナダのCDレーベル、サン・ローラン・スタジオSt.Laurent Studioで初めてCD化された。そのためCDを入手して演奏を聴取し、大英図書館所蔵のアイルズ旧蔵のメトネル作品の印刷楽譜に書き込まれたメトネル自身に由来する指示や、アイルズが書き残したメトネル作品の演奏法に関する文章との照合を試みた。アイルズの演奏はメトネルの指示や自身の記したメトネル作品の演奏法に忠実であろうとする明らかな傾向が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は、休暇中に個人的事情(転居とそれに伴う雑務)に対応せざるを得なくなり、休暇中にしかできないモスクワほかでの長期の調査が不可能になってしまったため。
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Strategy for Future Research Activity |
モスクワの関係施設(グリンカ音楽博物館、国立文学・芸術アーカイヴ、モスクワ音楽院図書館、ロシア国立図書館)での調査を最優先で行う。2週間ずつ2回、計4週間を予定する。そしてソナタ全曲について、9月までに批判校訂版楽譜の原稿を準備する。 楽譜の浄書も引き続き行うが、成果物としての批判校訂版楽譜の出版を楽譜出版社に働きかける。
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Causes of Carryover |
私事(転居及びそれに伴う雑事)が当初の予想を超える負担となり、夏季休暇中などに実施予定だった国外調査を行うことができなくなってしまったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
モスクワの諸施設における調査を最優先で実施する。2週間の調査を2回予定している。また、北米大陸におけるメトネルの音楽活動の協力者で、アメリカにおける亡命・移民ロシア音楽家と深く関わった音楽家・音楽学者アルフレッド・スワンAlfred Swanのアーカイヴ(ヴァージニア大学蔵)を調査する。さらに時間的・資金的余裕が生じた場合には、オーストラリア・ニュージーランドにおけるメトネル受容について、かの地の主要なメトネル演奏家だったジェフリー・トーザーGeoffrey Tozerの遺族及び関係者と連絡を取り、調査を行う。スワンやトーザーは、楽譜校訂の参考になる資料を持っていたことが期待される。
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