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2014 Fiscal Year Research-status Report

「静物」に関する脱領域的研究―ネーデルラント美術を中心に

Research Project

Project/Area Number 25370124
Research InstitutionTohoku University

Principal Investigator

尾崎 彰宏  東北大学, 文学研究科, 教授 (80160844)

Project Period (FY) 2013-04-01 – 2016-03-31
Keywordsネーデルラント / 静物画 / イコノクラスム / カルヴァン / カルフ / 中国磁器
Outline of Annual Research Achievements

ネーデルラント美術における「静物」のような形象が質量ともに自律した形をとって表舞台に躍進してくるのは、16世紀のイコノクラスム(偶像破壊)を契機としている。ドイツに端を発したこの運動をネーデルラントで深刻に受けとめたごく初期の画家はアーツェンである。絵の中で宗教主題の占める割合が後退し、「静物」モチーフが大きな割合を占めるようになる。絵画の最大の役割が物語の内容を伝えることから、「美的な機能」へと変容したのである。美的なものとは、美しいという感情だけではなく、憧れやあるいは政治性など宗教とは別の要素が表象される契機でもあった。絵画の役割が「美的機能」に重心が移ることで、モノそのものよりも、描かれたモノ、つまり絵画化されたモノの方により大きな価値がおかれるようになる。こうした感性のプロセスを形象を『キリスト教綱領』(1536年)を著したカルヴァンの宗教思想が大きく作用していた。
また、静物画に描かれたモノに着目することで、従来の言語中心、つまり文字史料に依拠する歴史観とは異なった景色が浮かびあたってくることが明らかになる。文字に現れない歴史は、イメージの連関関係を新たに見いだすことから発見できるのである。そうした研究領域が異国の表象である。その一つとして、特に「東洋」を表すものとして中国磁器などの「静物」に着目することは有効であった。具体的には、ヴィレム・カルフなど17世紀オランダの静物画に顕著に見られる。ここでは、「静物」として描かれた中国磁器がどの程度の数に上るのか、さらにはオランダに現在どの程度残されているのかなど継続的な研究を行い、基本的な枠組みが浮かびあがってきた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

これまでの二年間でネーデルラントの静物画がいかにインター・カルチュラルな領域であるかが明らかになってきた。しかし、昨年度調査したヴィッテ号の積載品の中国磁器と17世紀のオランダ静物画との関連性はいまだ明確にはなっていない。それは、この分野の基礎研究がオランダ側でもあまりすすんでいないこともにもよるが、何よりも現存する陶磁器と絵に描かれた陶磁器の絵柄に共通するものがかぎられているということにもよる。原物と描かれたものが一対一で対応するのではないかという実証性を重んじる仮説自体の修正が迫られている。新たなインター・カルチュラルなアプローチを考案しなければならないゆえんだ。そこから今日的な意味でのグローバル・アート・ヒストリーの方法が見えてくるに違いない。

Strategy for Future Research Activity

今後、アムステルダム歴史博物館、レイデンの民族学博物館、レーウワルデン市立博物館など継続的な調査を重ねることで、資料的な細部をかためていきたい。また磁器がオランダ文化に与えた影響は、図柄に限定されるものではなく、光のとらえ方など、17世オランダ絵画全体にかかわるのではないかという視点を組み込んでアプローチすることが今後求められる。

Causes of Carryover

当該研究が、文献資料を読解したり、イメージ資料を入手し海外調査の下準備に時間を要したため、海外への渡航を見送ったことが次年度への予算を先送りした最大の理由である。しかしそれは、研究の遅れというものではなく、研究を進める中で当初予想していた以上の複雑な問題に遭遇し、さらなる周到な準備を必要としたと言うことで、研究の深まりをあらわすものと解している。

Expenditure Plan for Carryover Budget

今年度は、計画の最終年度にあたるために、研究成果を論文にあらわすと同時に、積極的な海外発信が不可欠であり、英文による発表のために予算をあてる。さらに、延期した海外調査をも実施したい。

  • Research Products

    (4 results)

All 2015 2014

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results) (of which Invited: 1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] The Internal Body Revealed: Rembrandt"Who was a Godless Painter"2015

    • Author(s)
      Akihiro Ozaki
    • Journal Title

      Art History(Dep. of Art History, Tohoku University)

      Volume: 36 Pages: 1-7

  • [Journal Article] レンブラントのスペクタクル「受難」連作に見る「情念」の絵画化の射程2014

    • Author(s)
      尾崎彰宏
    • Journal Title

      『西洋美術研究』

      Volume: 18 Pages: 137-151

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 「カーレル・ファン・マンデル『北方画家列伝』について」2014

    • Author(s)
      尾崎彰宏
    • Organizer
      Philosophie des Geistes und Psychologie um1800”
    • Place of Presentation
      新潟大学駅南キャンパス「ときめいと」
    • Year and Date
      2014-09-28
    • Invited
  • [Book] フェルメールと「風俗画」の巨匠たち2015

    • Author(s)
      尾崎彰宏(監修)
    • Total Pages
      96
    • Publisher
      小学館

URL: 

Published: 2016-05-27  

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