2014 Fiscal Year Research-status Report
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25370125
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長岡 龍作 東北大学, 文学研究科, 教授 (70189108)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 善業 / 造像 / 霊場 / 景観 / 善根寺 / 古保利薬師堂 / 五百羅漢寺 |
Outline of Annual Research Achievements |
4つのテーマごとに以下の成果を得た。 (1)福行と継承:①山西省晋城青蓮寺を現地調査し、仏像と堂宇の伝来について確認した。②善根寺収蔵庫(広島県三原市)ならびに古保利薬師堂(広島県北広島町)に遺存する多数の平安初期仏像の調査をおこなった。善根寺の当初地と古保利薬師堂の景観調査、安芸国分寺の現地調査の成果を踏まえつつ、この地に薬師群像が伝承されてきた意義について検討した。これら両寺は仏像と立地環境に共通性のあることを確認し、安芸国における「郡寺の仏像」について展望を得た。 (2)往還と参詣:①雷山千如寺・浮嶽神社(福岡県糸島市)、鏡神社(佐賀県唐津市)を現地調査し、神功皇后伝承、藤原広嗣伝承と関わって霊場化する筑紫国の社寺の問題を検討する展望を得た。②往還の観点から『三宝絵』を再読するとともに、関連する絵巻物作品の検討を継続した。また、近世の江戸ならびに京都の古絵図について調査するとともに、特に、洲崎神社(江東区木場)を現地調査した。 (3)奉納と埋納:①継続中の仁寿舎利塔の景観調査として天池寺(大興県龍池寺跡、西安市)、古賢寺(山西省陵川県)、朝陽北塔(遼寧省)を踏査した。②正倉院宝物のうち、鳥毛立女図屏風について調査し、蓮華蔵世界との関係をあらためて確認した。③天福寺奥の院諸像(大分県宇佐市)、長谷寺十一面観音像(福岡県鞍手町)、国玉神社神像及び経塚遺物(福岡県豊前市)を調査した。天福寺については、奥の院に平安仏を多数集積する意味について検討した。 (4)記録と展示:①中世の宝蔵に関わって、平泉の諸寺及び骨寺村荘園遺跡(経蔵荘園)を現地調査した。特に骨寺村では近年発見された寺院址についての新知見を得た。②江戸の名所として五百羅漢寺(目黒区)を調査し、羅漢堂の羅漢像の図像的特色について検討するとともに、羅漢像の願主について記す造立寄進者簿から寄進の状況を知る手がかりを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究当初に想定した、四つのテーマごとに一定の成果を得ている。特に、(1)福行と継承では、中国山西省での調査をおこない、長年の念願だった青蓮寺上・下寺の仏像を実見できたことは、意義深い成果となった。また、国内では、特に広島県で調査をおこない、古代安芸国の造像について、尊種、分布、立地の各面に関して大きな成果を得ることができた。(2)往還と参詣では、北部九州の社寺の現地調査をおこない、霊場への参詣についてのケーススタディとして有益な成果を得た。また、『三宝絵』上巻を再読し、特に龍宮への「往還」にかかわるプロットを析出した。これに基づき「往還」をテーマとした絵巻物の読解に取り組んだ。(3)奉納と埋納については、仁寿舎利塔の故地と見て間違いない三例を確認できた意義は大きかった。舎利埋納と景観の問題について大きな成果を得ることができた。また、奈良国立博物館において正倉院宝物の「鳥毛立女図屏風」を実見し他界(蓮華蔵世界)との関連についてあらためて検討した。さらに、福岡市博物館、九州歴史資料館では、九州各域の神仏を調査し、奉納の観点から検討をおこなった。(4)記録と展示については、中世、近世の事例について検討することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、4つのテーマに沿って、調査及び検討をおこなう。 (1)福行と継承では、国内の銘文を伴う造像について、古代から中世の作例の作例を順次調査する。(2)往還と参詣については、古代の街道と関わる社寺の分布について対象を全国に広げて調査をおこなう。同時に、巡礼をテーマとした絵巻物、及び近世・近代の名所絵についての調査を継続する。(3)奉納と埋納については、仁寿舎利塔の起塔地の調査、正倉院宝物についての検討を継続するとともに、仏像を埋納した経塚の遺例について現地調査をおこなう。(4)記録と展示については、中世の宝蔵、近世・近代の名所と展覧という、二つのテーマについて、前者については事例調査を、後者については現地調査を順次おこなう。 また、最終年度にあたる今年度中には、成果を書籍のかたちで刊行する。
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Causes of Carryover |
年度末に予定していた、南禅寺(静岡県河津町谷津)での調査を日程調整の必要があり次年度におこなうことに変更した。そのため、当該の旅費分を次年度に使用することにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
南禅寺(静岡県河津町谷津)での調査を2015年5月~6月におこなう計画である。
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