2015 Fiscal Year Research-status Report
J. McN.ホイッスラーと二人のパトロンの日本美術コレクションに関する調査研究
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25370130
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小野 文子 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (10377616)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ジャポニスム / パトロン / 日本美術コレクション |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に続き、J. McN.ホイッスラーの初期のパトロンであった、W.C.アレクサンダーの日本美術コレクションの調査を行った。これらの品々は、アレクサンダーの二人の娘により、1916年にロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館に寄贈されたが、その数はおよそ6,000 点に及ぶことから、作品1点、1点を確認しながらデータ化する作業には時間を要するが、エクセルにデータ化することで、ジャポニスム前期における日本美術コレクションの性格を把握、分析することが可能となった。また、ワシントンD.C.にあるフリーア美術館、同館アーカイブを中心に資料収集、調査を行った。ここでは、アーカイブに所蔵されている収蔵品に関わる記録や未解読の書簡、とくにフリーアとホイッスラーに共通する人物、例えば金子堅太郎や執行弘道、あるいはパリの美術商ジークフリート・ビングとの間に交わされた書簡の画像データを入手し、翻刻、分析を行った。この調査により、ホイッスラーと、彼の友人であり後期の重要なパトロンであったC.L.フリーアを取り巻く日本人やジャポニストとの関わりが明らかとなった。また、同美術館のアメリカン・アートを専門とする学芸員、および日本美術を専門とする学芸員からの文献提供、多角的な視点での意見交換により、フリーアの日本美術コレクションの形成の過程について、多くの知見を得た。 さらに、アレクサンダーとフリーアの日本美術コレクションを比較することで、ジャポニスムという文化現象を支えたパトロンたちの日本美術に対する嗜好や意識の変化について、ジャポニスムの初期と後期との比較を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画にそって、おおむね順調に進展している。研究を進めるにあたって、大きな問題は生じてはいないものの、調査の過程で、コレクションが一部散逸していることが分かり、この点についての資料収集の手段を考える必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、フリーアの初期の日本美術収集作品についての調査を行い、ホイッスラーの作品との関連について検討する。また、これまでに収集した書簡の翻刻を引き続き行い、その他の文献と合わせて分析する。さらに、過去3年間の研究のまとめとして、アレスサンダーとフリーアのコレクションの比較を行い、画家とパトロンとの関わりから、ジャポニスムの時代的、地域的広がりについて考察を行い、本研究のまとめとする。
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Causes of Carryover |
文献整理を速やかに行うために、モバイルPCを購入したいと考え、その一部を繰り越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度請求額と合わせてモバイルPCを購入し、研究環境の利便性を整えることで、文献整理を速やかに行う。
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