2015 Fiscal Year Research-status Report
バロック美術におけるカトリック改革の影響についての総合的研究
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25370132
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宮下 規久朗 神戸大学, その他の研究科, 教授 (30283849)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バロック / カトリック改革 / カラヴァッジョ / カラヴァッジェスキ / ベラスケス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、カトリック改革が西洋美術に及ぼした影響を解明するため、16 世紀後半か17 世紀初頭にいたるイタリアを中心とする教会と美術、政治と美術との関係に注目し、作品検閲・装飾事業・収集活動といった、作品をめぐる権力と受容の問題を通して、カトリック改革が、マニエリスムとバロックとの過渡期であるこの時代の美術にどのように具体的に作用したのかを探るものである。とくに、その中心として、ローマにおけるカラヴァッジョの活動に注目する。 今年は16世紀後半から17世紀初頭のスペインにおけるカラヴァッジョの影響について調査した。スペインにおけるカラヴァッジェスキの展開については、いまだあきらかになっていない。しかし、ボルジャンニやカヴァロッツィの来訪や、トレドのトリスタンやマイーノ、バレンシアのリバルタ、そしてナポリのリベラなどを通じてスペイン絵画に大きな影響を及ぼしたのはたしかであり、当時のセビーリャにおいてもカラヴァッジェスキは最新の流行様式であったと思われる。カヴァロッツィとともにマドリードにやって来たローマの貴族ジョヴァンニ・バッティスタ・クレシェンツィは、フェリペ4世に仕えて建築家や静物画家としても活躍し、マドリードに写実的な静物画を流行させたことにも着目した。そうした環境で画風形成したベラスケスにカラヴァッジョの影響があったか否かについては、近年、否定派が優勢である。しかし、セビーリャにあったカラヴァッジョの《聖ペテロの磔刑》の模写がベラスケスのいくつかの作品に影響していることを指摘することができた。 国立西洋美術館で開催されたカラヴァッジョ展のカタログ制作に関わり、「蝋燭の光の画家」などのカラヴァッジェスキについての考察を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心をなすカラヴァッジョとその影響について調査研究を深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
カトリック改革の影響について、フランドルや南ドイツの諸相を調査する。
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Causes of Carryover |
わずかな差額を使い切ることができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
文房具を購入する。
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