2014 Fiscal Year Research-status Report
気象芸術学の試み:二〇世紀初頭における庭師と天文学者と建築家
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25370135
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
後藤 文子 慶應義塾大学, 文学部, 准教授 (00280529)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 西洋近代美術史 / 近代建築・デザイン / 総合芸術 / 園芸哲学 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主目的である近代芸術・建築研究に新たな視座を開く研究方法論としての気象芸術学(Meteorologische Kunstwissenschaft)の構築のために、従来の近代芸術・建築研究において看過されてきた庭師(造園植栽家Gaertner)の造園活動および造園哲学とモダニズム建築の関係を主軸に据えつつ、彼らの取り組みにとって看過し得ない近代人文科学における諸状況、とりわけ同時代の天文学・化学・物理学・生物学・生理学・倫理学等、隣接する諸科学相互の関係性について問題の解明を進めている。 昨年度に引き続き本年度も、国外における資料調査、研究者との国際的な情報交換を実施した。ドイツにおいては、ベルリン・ブランデンブルク州立学術アカデミー・アーカイヴにおける一次資料調査(造園植栽家カール・フェルスターの書簡等、天文学者ヴィルヘルム・フェルスターの書簡等、ノーベル化学賞受賞科学者ヴィルヘルム・オストヴァルトの書簡等)、ベルリン州立図書館手稿コレクションにおける一次資料調査(造園植栽家カール・フェルスターの書簡等)を実施し、従来看過されてきた一次資料レベルでの多くの情報を得た。さらに、ベルリン工科大学付属造園学図書館アーキヴィストと面会し、一次・二次資料に関する貴重な情報交換の機会を得た。 さらに、アメリカにおいて、シカゴ・イリノイ大学付属図書館貴重書室所蔵になる建築家ミース・ファン・デル・ローエ旧蔵書コレクションを調査し、当該建築家が生前に集中的な講読に取り組んだ生物学者ラオル・アンリ・フランセの著作をまとめて実見した。これを通して、従来の近代建築史・美術史研究がかならずしも正当に評価してこなかった、ミースにおける近代自然科学思想の受容状況に関して新たな知見を得たことは、本研究にとっての大きな成果である。さらに、ニューヨーク近代美術館における建築資料調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請当初の研究計画において初年度の実施を予定し予算化していたアメリカ(シカゴ、ニューヨーク)における資料調査を次年度に先送りした経緯があったが、本年度それを実施できたことは大きな成果である。そこから得た知見を本年度中に論文として公表することができれば幸いであったが、調査そのものの実施が年度末であったため、それに至っていないことが反省すべき点である。これについては、研究最終年度中に論文として学会誌に公表する計画である。 本研究にとって資料調査レベルで重要である造園植栽家カール・フェルスターの旧蔵書調査について、研究初年度より、当該資料を管轄するドイツ、ポツダム市文化財局に実施申し入れを行っているが、資料が目下整理中であるため今年度もその実見が叶わなかった。しかしながら、引き続き担当者との継続的な連絡を維持し、研究最終年度の実施を打診中である。これによっても研究の前進が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度の今年度は、基本的にこれまでの資料調査成果の分析と解明、社会的な公表に務める予定である。目下、学会誌を含め3論文を準備中であり、少なくとも研究最終年度中に投稿を行う計画である。また、国際的な学術情報交流を目的としてドイツ語での論文公表について目下、その可能性について検討中である。 また研究成果の社会的貢献として、ドイツを中心とする研究者ネットワークを活用し、討議研究会の実施を検討している。これに関しては、申請者が平成27年度、本務校より1年間の研究年を得てドイツ(ベルリン市)に在住し、フンボルト大学美術史研究所客員教授として研究に従事できる環境にあり、現地の研究者との交流環境が良好に整っているため、ぜひとも実施し、成果の活字化を実現したい。 その一方で、未調査課題も残しているため、ドイツ国内を中心にアーカイヴ調査(ヴィルヘルム・オストヴァルト・アーカイヴほか)も継続的に実施したいと考えている。
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Research Products
(1 results)