2014 Fiscal Year Research-status Report
鎌倉時代における地方仏の発生と展開に関する基礎的研究
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25370137
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Research Institution | Tama Art University |
Principal Investigator |
青木 淳 多摩美術大学, 美術学部, 准教授 (00305806)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地方仏 / 湛慶時代 / 快慶工房 / 年輪年代測定法 / 四国地方 / 遍路文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、企画展「祈りの道へ─四国遍路と土佐のほとけ─」(2014/11/22~2015/1/19、多摩美術大学美術館)において、これまでの研究成果の一端として四国地方における造像の歴史とその地方的な展開の特性について紹介した。この展覧会では 、これまでに県外ではほとんど公開されることのなかった高知県下の仏像・仏画・工芸資料など数十点と、四国地方における遍路文化並びにその背景にある弘法大師空海に対する地域信仰について、様々な見地から言及を行った。またこの展覧会の開催に合わせて、元、国立奈良文化財研究所研究員光谷拓実氏による年輪年代測定の実査が行われ、平安時代から鎌倉時代にかけての造像と考えられる仏像について以下のような用材の伐採年代が確認された。 ①高知県・東洋町 名留川観音堂菩薩立像 3号像 1021年頃 (ヒノキ材) ②高知県・室戸市 椎名観音堂十一面観音像 1066年頃 (ヒノキ材) ③高知県・大豊町 定福寺地蔵菩薩像(笑い地蔵 5号像)1185年頃(ヒノキ材) 仏像の場合、用材 の伐採年代と制作年代の間に相応の時差が発生することが考えられるが、今回示された年輪年台測定の結果について、美術史的な様式論によって導き出された従来の制作年代、例えば①12世紀前~中期、②11世紀後半~12世紀前半、③12世紀前半~13世紀後半といった、従来までの年代観とは凡そ±50~150年にわたる開きがあることが、その結論から導き出された。こうした科学的な方法を、いかに美術史をはじめとする学界が取りあげ、新たな指標(ものさし)を構築しうるのかという問いかけを頂いた。この光谷氏による調査の成果は、今後美術史や建築史における、特に従来まで、試験資料の少なかった四国地方~中国地方における木質用材を用いた歴史的文化財について、新たな基礎研究の土俵を切り開いたもの として注目されよう(光谷拓実・多摩美術大学美術館編『年輪年代測定法』)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の成果として企画展「祈りの道へ─四国遍路と土佐のほとけ─」(2014/11/22~2015/1/19、多摩美術大学美術館)を開催し、多くの方々に四国の宗教文化を紹介できたことはなにものにも替え難く思う。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、前年度に引き続き、四国地方、ならびに九州地方における鎌倉時代に製作された仏像について、地域で育まれた造形志向の調査、あわせて光谷拓実氏の協力をいただき同地域の年輪年代測定を実施したいと考えている。これらの成果は、平成28年春に高知県室戸市一帯において予定されている展覧会(室戸市、室戸市教育委員会主催)において、紹介し本研究の総合的な成果としたい。
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Causes of Carryover |
平成27年2月に病気のため一時入院し、研究費を使用できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、四国地方、ならびに九州地方における鎌倉時代に製作された仏像について、地域で育まれた造形志向の調査、あわせて光谷拓実氏の協力をいただき同地域の年輪年代測定を実施予定の為、主に旅費に使用予定。その他、研究関連資料、研究データ取り纏めるための記録媒体等への使用を予定。
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Research Products
(10 results)