2015 Fiscal Year Annual Research Report
清水多嘉示が遺した資料の研究-近現代美術史の周辺と専門的美術教育について
Project/Area Number |
25370138
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Research Institution | Musashino Art University |
Principal Investigator |
黒川 弘毅 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (50366879)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 近代日本彫刻 / 清水多嘉示 / 専門的美術教育 / ブールデル受容 / 戦争と美術 / 帝国美術学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
武蔵野美術大学美術館で開催された日英共催「近代日本彫刻展」帰国展(5月23日~8月16日)に付随する国際シンポジウム(7月17日・18日)では「西洋彫刻の受容」と「単純な西洋化とは異なる近代化」がテーマとなった。高村光太郎・佐藤朝山・橋本平八・等、出品作家等の西欧体験の意義、院展彫塑部の活動を考察する上で、彼らと清水との大正・昭和前期における交差の記録を豊富に残す清水資料の研究は直接的・間接的なベースとなった。この企画には本研究の深化を期して研究者全員で取り組み、そのことは近代日本彫刻に関する初めての国際的な催しを実現する背景となり重要な成果をもたらした。また日英の国際共同研究で次の射程にも浮上しているテーマ「西欧美術教育の受容とその展開」に関して、本研究は官立とは異なる私学の美術学校の実像について有用な新知見をもたらした。帝国美術学校で学んだ李快大の特別展が韓国の国立現代美術館で開催され(7月22日~11月1日)、展示諮問委員となった朴による研究がこれに深く寄与し、東アジアの近代美術形成にはたした私学の専門的美術教育の役割を示した。これらにより、西洋的なもののアジアへの移植により展開したこの地域の近代美術とその周辺領域の非西洋的な歴史形成を解明するものとして、本研究は国際的な成果をあげたと言うことができる。 本事業で作成したデータベースの画像データは約24000あり、当初は目録数を5000で想定していたが10000を越える目録化を実行し、次のステップである武蔵野美術大学美術館・図書館でのアーカイブ公開に向けての作業を同大学共同研究で継続する方針を決めた。既に作成済みの作品資料データは、その後に判明した追加・訂正を加え本事業のデータと統合された。平成28年3月末の時点で画像データの整理を終えて、データベースは若干の修正と戦後期の文書整理で作業を残しているがほぼ形をなした。
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Remarks |
清水多嘉示資料展は2011年に開催され、1945年までの資料を二回に分けて展示した。資料展Ⅰは諏訪地方で過ごした青春期からパリ留学から帰国した1928年まで、資料展Ⅱは帝国美術学校の設立に参画した1929年から敗戦までである。これらの展示は本資料の重要性が研究者に広く認識される契機となった。
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Research Products
(18 results)