2015 Fiscal Year Annual Research Report
イメージの記憶とアナクロニスムをめぐる歴史人類学的研究
Project/Area Number |
25370142
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
水野 千依 青山学院大学, 文学部, 教授 (40330055)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イメージ人類学 / トポミメーシス / 聖像儀礼 / アナクロニスム / ヴォルト・サント / 主日のキリスト / ヒエロトピー / 聖遺物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、西洋キリスト文化において、時代を超えてイメージが宿す記憶とアナクロニスムの問題を、二つの視点から歴史人類学的に考察することを目的とした。 ①第一の視点は、16世紀の対抗宗教改革において検閲対象とされた図像に着目し、既存の多種多様な図像伝統がいかに混淆しつつ周縁的で逸脱的な図像を生みだしたのか、また初期キリスト教時代にまで遡る呪術的形象の記憶がいかに残存してきたかを考察するものである。今年度は、ルッカのヴォルト・サントと呼ばれる木製彫像が国際的に普及する中で、聖像譚と図像の記憶がいかに複雑な変容を遂げるかを調査した。特に図像面では、のちに抑圧の対象とされた有髭聖女ウィルゲフォルティスへと性差の敷居を超えて転生していった経緯を明らかにした。さらに、ヴォルト・サントを派生源の一つとする特異な図像「主日のキリスト」に至る広範な図像のミッシング・リンクをたどり、文化的葛藤の中で周縁的な図像がいかに変容しながら死後生を展開させるかを一考し、その成果をもとに、論文を執筆した。 ② ルネサンスの古代理解におけるアナクロニズムの問題については、トスカーナ地方の礼拝像をめぐる伝承と儀礼について、9月に現地で作品調査と資料収集を行った。今後、さらに事例を増やし、包括的な調査を行い、書籍としてまとめる予定である。
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