2014 Fiscal Year Research-status Report
和物彫漆の基礎的研究―堆朱楊成・玉楮象谷・偕楽園塗を中心に
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25370147
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Research Institution | Mitsui Bunko |
Principal Investigator |
小林 祐子 公益財団法人三井文庫, 文化史研究室, 学芸員 (60399334)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 工芸 / 漆工芸 / 彫漆 / 堆朱 / 偕楽園 / 徳川治宝 / 玉楮象谷 / 御庭塗 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は研究計画にもとづき、以下の通りに研究を遂行した。 1.前年度に実施した作品の所在確認アンケートにより、14件の玉楮象谷・堆朱楊成の彫漆の所蔵が新たに確認できた。これに加えて、新たな情報提供により所在が確認できた国内外の機関・個人所蔵家等において、作品調査を実施した。また同時に、和物彫漆の比較検討材料である唐物彫漆の調査をおこなった。調査方法は、目視による観察、マイクロスコープを用いた詳細な観察、写真撮影、計測、記録などである。これにより、研究対象を細部にわたって比較・検討するための有益なデータを得ることができた。 所蔵者:アメリカ・サンフランシスコ・アジア美術館、東京・個人所蔵家、京都・個人所蔵家、大阪・個人所蔵家など 2.1で得た調査データ・画像などを、前年度に作成したデータベースに加え、情報の拡充を図った。 3.実作品の調査と並行して、展覧会図録、売立目録など関連する文献資料の収集を行い、データベースに追加した。 以上、今年度は和物彫漆とくに玉楮象谷の作品、および唐物彫漆の作品データ数が飛躍的に充実した。現在、それらと、これまでに収集した偕楽園塗のデータとの比較し、器形・文様・技法などの共通点や相違点について、検討を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、ほぼ研究計画通り、順調に研究を進めることができた。 前年度に実施したアンケートで14件の新資料の存在が明らかとなり、それらの半数程度を実調査することができ、調査データの充実がはかれた。また同時に、和物彫漆の比較検討材料である唐物彫漆の調査データも拡充させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に予定していた作品調査のうち、所蔵機関の都合により年度内に調査できなかった箇所もあったため、来年度の早期に作品調査を実施する予定である。 また、これまでの目視などによる調査を通して、和物彫漆と唐物彫漆に使用されている下地などの材料について、科学的な分析をおこなうことで、両者の共通性や差異を見出せるのではないかと考えるようになった。現在、科学分析機器を所有する研究機関に協力を打診しているところである。 平成27年度は最終年度となるため、年度後半には研究成果をとりまとめ、論文や口頭発表などのアウトプットも積極的におこなっていきたい。
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Causes of Carryover |
平成26年度末に予定していた大阪・個人所蔵家の作品調査が、先方の都合で延期になったため、国内旅費に余剰が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度の国内旅費に充当して、予定していた個人所蔵家方での作品調査のための費用として使用する。
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