2015 Fiscal Year Research-status Report
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25370148
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
丸山 士郎 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 室長 (20249915)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神像 / 神話 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は仏像とならんで日本彫刻史上重要な位置を占めながら、独自の研究方法が確立しているとはいいがたい神像について、それぞれの神が持つ固有の伝承や信仰という物語を根拠に神の姿(神像)が造られたはずであるという視点に立って、表情や仕草を読み解き、姿にこめられた意味を探ることを目的とする。平成27年度は鎌倉時代に製作された神像を含めた人物像を中心に調査を実施した。鎌倉時代の彫刻は写実性が特徴であるが、写実性とは説明的表現ともいえ、製作者の意図を読み解く表現が多いと考えられるのである。 島根・赤穴八幡宮の八幡三神像は、鎌倉時代の神像彫刻を代表する写実的作品で、嘉暦元年(1326) に慶(鏡)覚が造ったことが銘文から知られる基準的作品としても貴重である。八幡神の多くは僧形で表わされることが多いが本像は若い武家の姿をしており、八幡神と応神天皇が同体であるという考えに基づく作品と考えられる。二体の女神像は、表情に大きな相違が無いようにみるが、装束には華やかなものと地味なものがあり、前者が妃、後者が母神功皇后とみられる。装束以外にも識別する手掛かりがないかさらに検討する必要がある。 神像彫刻は人物像に通じる表現であることから、鎌倉時代の人物表現の代表的作品である、大報恩寺の快慶作の十大弟子立像についても調査を実施した。本像は人物像とはいえ釈迦の10人の代表的な僧の肖像で、単なる人ではないことを示す表現について考える資料としたい。 昨年度論文を執筆した南宮神社神像群についても追加の調査を実施し、製作時期の異なる二群の関係について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の当初の計画の通り鎌倉時代の神像や関連する作品の調査を実施し、写真などの資料を作成することができた。また、既に論文にまとめた南宮神社神像群の再調査を実施するとともに、地誌類の資料の調査も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き作品調査を実施するが、9-10世紀につくられた神像としては初期に属する作品の調査を実施したいと考えている。神らしさをどのように表現するかを追及した時期であり、それがどのように成立して行ったかを考えたい。平成28年は最終年度に当たるので、論文等のかたちで成果をまとめることを目指す。
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Causes of Carryover |
作品調査旅行を科学研究費以外の経費で実施することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画のとおり作品調査を実施するとともに、調査に必要な物品を購入する。
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