2013 Fiscal Year Research-status Report
江戸幕府による自然史科学の萌芽と御用絵師の役割に関する研究
Project/Area Number |
25370150
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
Principal Investigator |
小野 真由美 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, その他部局等, その他 (90356270)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 博物学 / 本草学 / 狩野派 / 写生図 / 狩野常信 / 人見竹洞 |
Research Abstract |
自然観察によって自然の原理や根源を求めていこうとする動向は、我が国においては博物学として江戸時代にすでにその兆しがみられた。江戸幕府による本草学や博物学の興隆は、江戸中期、とくに享保年間(1716-36)以降と考えられてきた。しかし本研究では、その萌芽の時期を江戸初期すなわち17世紀に求めるべく、狩野探幽筆「草花写生図」および狩野常信筆「草花魚貝虫類写生図」を調査した。これによって江戸初期の幕臣や御用絵師らによって、自然観察や諸産物の集成といった科学的視点が牽引され、その後に享保年間以降の本草学や博物学の興隆が導き出されたことが明らかになってきた。 本年度の主な成果は、狩野探幽筆「草花写生図」および狩野常信筆「草花魚貝虫類写生図」の全ての注記(1030件)のデータ化である。それらデータをもとに、写生図の制作背景を考察した結果、探幽を踏襲した常信によって、幕府主導の写生図制作が行われたことがみえてきた。とくに写生図制作に関わった幕臣や藩主、たとえば水戸藩家臣、人見竹洞などの儒学者、金地院などの社寺についてその詳細(32件)が明確になった。 また常信と交友のあった近衛家熙や錦小路頼庸の日記を調査し、宮廷における本草学と写生図制作の関連を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は狩野常信筆「草花魚貝虫類写生図巻」29巻全ての画像を撮影し、注記のすべてをデータ化することができた。狩野常信筆「草花魚貝虫類写生図巻」の画像および注記の情報は、幕臣や藩主の名が記され、かつ江戸初期における動植物の生態を詳しく知ることのできるものである。それらは美術史のみならず歴史学や博物学などの諸分野に資する内容であり、応用性や多様性のある研究成果となった。 また、これまで江戸初期(17世紀)における自然観察の事例は実証されていなかったが、本研究で狩野常信筆「草花魚貝虫類写生図巻」に着目することで、江戸初期における博物学の萌芽の様相や、そこに関わった幕府の状況について新知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、狩野常信筆「草花魚貝虫類写生図」のデータ化を行い、その制作背景、幕府との関連などを実証することができた。今後は狩野探幽との関連をはじめ、常信の写生図が同時代や次世代に与えた影響など、多角的な研究へと発展させたい。
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Research Products
(2 results)