2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370154
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sen-oku Hakuko Kan |
Principal Investigator |
実方 葉子 公益財団法人泉屋博古館, その他部局等, 学芸課主査 (40565587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣川 守 公益財団法人泉屋博古館, その他部局等, その他 (30565586)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高麗仏画 / 蛍光X線顔料分析 / 国際情報交換 / 韓国 |
Research Abstract |
今年度は作品調査を集中的に行った。泉屋博古館および他機関が所有する高麗仏画について、原則として四つの立場から同時に分析した。すなわち高精細デジタル画像、蛍光X線による顔料元素分析、修復・模写制作の視点からの分析、そして美術史的分析であり、研究代表者・研究分担者・連携研究者・研究協力者の四者が立会いデータ採取を進めた。 具体的には、まず解体修復中で裏面が露出した状態となった《楊柳観音像》(徐九方筆・重文・泉屋博古館蔵)に関し、修理施工業者株式会社岡墨光堂および京都大学工学部井手研究室の協力をも得、大型高精細スキャナによる撮影、蛍光X線分析、顕微鏡撮影、観察を行い、裏彩色の痕跡、表面彩色の下層などといった顔料の賦彩状況、墨線の下描きなど、表面からはうかがえない情報を得た。 ついで《阿弥陀三尊像》・《楊柳観音像B》(ともに泉屋博古館所蔵)について表面から上記4つの視点からの分析を行った。ことに後者は徐九方本(A)の絶好の比較対象となった。また大和文華館の協力を得て《水月観音像》など3点について高精細デジタルカメラ撮影、蛍光X線顔料分析などを行った。 平行して、徐九本の模写制作のための材料の調達を行う。絹地は糸の太さや密度など原本に近いものを探求するも、反物の幅が異例の広さであり、今日では調達困難と判明、なるべく類似したもので代用することとなった。骨描き(墨の下絵)制作を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最重要調査と目する《楊柳観音像》(徐九方筆)の裏面調査から多くの情報を得たこと、そして類品調査が着実に進行していること、今後の調査対象品の所蔵者との調整も進みつつあること等をふまえると、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、引き続き他機関所蔵仏画の調査を進めるとともに、これまで得られた情報の分析、関係者間の議論を深めるための研究会を開催する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費については、韓国の研究協力者招聘に関し他の助成金を用いたこと、また協力者の都合で来日機会を次年度に遅らせたこと。謝金については《楊柳観音像》(徐九方筆)裏面調査に関して京大井手研究室との共同研究という形となり、画像加工費が不要になったこと、サビア社の画像加工作業完了が次年度にずれ込んだことなどによる。 次年度には当初の計画に加え、韓国の研究協力者との打ち合わせ機会を増やし、また新たに韓国の高麗仏画研究の権威鄭于澤氏も調査、研究会などに招聘する。高精細画像の加工作業を進め、また閲覧、分析に好適な環境を整えるべくディスプレイなど機器の調達を行う。
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