2015 Fiscal Year Annual Research Report
移動の映像政治学ー人種と社会的公正をめぐるテクノロジー
Project/Area Number |
25370158
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
清水 知子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (00334847)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 香鎮 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (80535964)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 人種 / 映像 / 多文化主義 / 他者 / シティズンシップ / 公共性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、移動や移住の経験を通じて形成されつつある新たな主体と共同性の可能性に目を向け、多文化社会におけるメディアの公共性について考察するものである。具体的には、移動する人々を表象する映像文化の制作、受容、流通過程をテクスト分析及び聞き取り調査から考察し、それぞれの過程において他者のイメージがいかに形成され流通しているのか、その力学を明らかにしていった。それにより他者との共同性の可能性と限界を浮かび上がらせ、新たな公共性のあり方を提案することを試みた。 最終年度にあたる本年度は、これまでの研究の成果を国内及び国際学会において発表し、国内外の研究者との議論を通して得た知見をもとに論文及び著書にまとめた。欧米における人種、他者、敵のイメージの生成と変容について理論的な考察を試みた清水は、現代アートにおいてニコラ・ブリオ―によって提示されたキーワードである「関係性の美学」と「オルターモダン」を切り口に、現代社会における他者との共生の可能性について、その可能性と課題を国内の学会シンポジウムで提示し、またインドネシアで開催された国際学会で、芸術におけるイメージの「不寛容性」について具体的な芸術作品と検閲の問題をとりあげながら新たな理論的地平を提示した。これらの発表の成果に加え、現代のリベラル社会における宗教的な他者と多文化主義の陥穽に関する論考をふくめ、その成果を共著書4冊に論文としてまとめた。一方、アジアを中心に考察した李香鎮は、主にアメリカにおいて北朝鮮の映像イメージがどのように受容されたのかという視点から、日本、韓国、米国において聞き取り調査を重ね、その結果をインドネシア、韓国、米国で開催された国際学会および研究会で発表し、国際学会誌及び英語での共著本としてまとめた。いずれも数々の有益な助言を得ることができた。その成果は2016年度中に著書として刊行される予定である。
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Research Products
(25 results)