2013 Fiscal Year Research-status Report
ジャンル・ヌーヴォーとしてのインド舞踊とロシア・バレエの出会い―多元主義の芸術
Project/Area Number |
25370160
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平野 恵美子 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (30648655)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | バレエ / インド / 舞踊 / シャンカール / パヴロワ / バレエ・リュス / ジャンル・ヌーヴォー / オリエンタリズム |
Research Abstract |
私はバレエ・リュスにおけるジャンル・ヌーヴォーの表象を研究している。伝説的なバレリーナであるアンナ・パヴロワは、有名なバレエ・リュスを離れた後、自身のバレエ団を結成して世界中で公演した。だが世界的な名声を得たパヴロワが、1923年にロンドンのロイヤルオペラハウスで、日本舞踊とインド舞踊を上演していたことはあまり知られておらず、またその意義についての研究は少ない。この時、パヴロワと共演したのは、著名なシタール奏者ラヴィ・シャンカールの長兄、ウダイ・シャンカールというインド人青年である。ウダイは、現在世界中で認知されているインド舞踊の復興者であり、西欧で初めて本格的にこれを紹介し、またインド舞踊が世界で認知されたことにより、自国におけるインド伝統舞踊復興のきっかけを作った。だが世界的に見ても、ウダイ・シャンカールに関する学術的な研究は少ない。2013年度、私は、ロンドンの大英博物館およびパリの仏国立図書館で、パヴロワやウダイが公演した当時の新聞批評や関連記事等の複写を多く行なうことができた。これらの資料を通して、1920~30年代のヨーロッパにおける、パヴロワやウダイの受容を再確認できた。それと同時に、その頃、ウダイが彼の祖国であるインドにおいても、既に大きな評判を得ていたことが明らかになった。当時まだ英国の植民地であったインドにおいて、土着の踊り手としてではなく、いわば英国風に洗練されたウダイの公演が評価を得ていたことは、「西欧から東洋へもたらされた東洋演劇」というパラドックスがあったという点で非常に興味深い。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「おおむね順調に進展している」とした理由は、「研究実績の概要」で述べた通り、ロンドンの大英博物館およびパリの仏国立図書館で、パヴロワやウダイが公演した当時の新聞批評や関連記事等の収集を、順調に行なうことができたからである。特にインドにおける英国系新聞記事を相当数見つけることができたのは、収穫だった。しかし特に大英博物館で、シャンカールに関する記事が予想以上に多く、収集に時間がかかり滞在が長引いたことと、これらの資料の分析にも相当数の時間を要し、2013年度は予定していたインドへの渡航が適わなかった。一方で、ドイツと米国におけるシャンカールの活動に関する研究を発見することができ、今後の自分の研究の方向性における重要なヒントを得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2013年度はイギリスおよびフランスで相当数の資料数を収集することができた。しかしヨーロッパとインドの両方からウダイやパヴロワを捉えるという点において、2013年度中に適わなかったウダイの祖国であるインドへの渡航を、2014年度は実現させたい。 また、これまで新聞批評や関連記事等の収集は、実物をコピーするという方法を主に取っていたが、昨今、欧米の資料は、大変なスピードで電子化が進み、一つの図書館に座っているだけで様々な資料へのアクセスが可能となった。だが、これらの資料がインターネット上のどこにあるのか、正しく理解していないとなかなか辿り着けないという問題も生じて来た。資料によっては、自宅からアクセス可能なものもあるが、電子化した資料を持っているプロバイダが特定の図書館と契約している場合、その図書館からしかアクセスできないので、注意が必要である。また、図書館のパソコンで閲覧できても、電子資料からの複写が不可なものもあり、その場合はやはり実物を所蔵している図書館で、実物資料からの複写が必要となる。このような様々なテクニカルな課題を解決し、限られた滞在時間を最大限有効に使えるよう、渡航前の十分な下調べが予想以上に必要である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
イギリスおよびフランスでの資料収集と分析に予想以上の時間がかかり、予定していたインドへの渡航を行なわなかったため、これに伴い予想された旅費、物品費、人件費の出費が2013年度は生じなかったため。 インドにおける研究調査旅行への費用として、使用予定。
|
Research Products
(2 results)