2015 Fiscal Year Research-status Report
ジャンル・ヌーヴォーとしてのインド舞踊とロシア・バレエの出会い―多元主義の芸術
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25370160
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平野 恵美子 東京大学, 人文社会系研究科, 助教 (30648655)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 帝室劇場 / インド舞踊 / ウダイ・シャンカール / アンナ・パヴロワ / ロシア / バレエ / ジャポニズム / ジャンル・ヌーヴォー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、「西欧と東洋芸術あるいは,西欧と非西欧,西欧から見たマージナルすなわち周辺・境界の芸術」の影響関係を,広くマクロ的に考察することから始まり、バレエ・ダンスなどの舞台芸術を中心にロシアとジャポニズムの問題に迫ることにより、「東洋舞踊とロシア・バレエの出会い」のより詳細な研究を遂行することができた。 特に他の研究者らと協力し、革命前の帝室劇場におけるジャポニズム・バレエの実態や、明治期にロシアに渡った日本のサーカス芸人らの活動も見ることにより、いわゆる「素人」芸人・舞踊家の受容の問題を深く考察した。ウダイ・シャンカールも当初は、美術の勉強のために英国に留学し、その傍ら父親の劇団の公演に参加し、アンナ・パヴロワの目に留まったのだが、こうした東洋舞踊や非西欧世界からやって来た舞台芸術は、西欧の目から見れば初めは異質あるいは「原始的」と看做されたのだった。 だが「原始的」という言葉をキーワードに当時の受容について調べると、実際に技能的に劣っているという意味の「原始的」ではなく、むしろ文明の発展が行き詰まった西欧で、「原始的」な東洋は新たな可能性を切り開く希望として捉えられていたようである。そのために本来は高度な技術や技能を必要とする芸能であるにもかかわらず、「原始的」というレッテルが貼られたケースが多い可能性に着目する必要があることが明らかになった。こうした事実は、シャンカールの人気と受容を考える上で重要な要素である。 一方、ロシアにおいては、「原始」の向かう先として、当初は東洋や古代ギリシアなどが理想とされたが、結局のところ自らの、すなわちロシアのルーツである原始に向かうことにより、「春の祭典」や「結婚」のような、プリミティヴィズムに依拠した傑作が生まれたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記した成果に加え、本年度は、1890-1900年の10年間の、ロシア帝室劇場におけるオペラとバレエのレパートリーと上演数の調査を完了することができた。これにより、既に調査済みの1900-1910年の10年間と合わせて、欧州の主要な劇場の1つであるロシアのボリショイ劇場とマリインスキー劇場で上演されていたバレエとオペラの演目の実態が明らかになり、欧州のその他の劇場や、公的な劇場以外で行なわれていた私的な公演との比較を行なう準備がより整った。中でもロシアの帝室劇場では、ロシア・オペラの上演数が原曲が他言語のオペラのほぼ倍であることがわかった。特に私の研究「ジャンル・ヌーヴォーとしてのインド舞踊とロシア・バレエの出会い」において、東洋の舞踊芸術がどのような形で受容されていたか明らかにすることが重要であるが、ロシア・オペラ、またその他の西欧オペラにおけるオリエンタリズムの考察に加え、東洋の、特に日本人の舞踊家がどのような形でロシアで公演を行ない、知識人や一般人がこれを見ていたか、その一端を明らかにすることができた。また、研究の成果を3つのシンポジウムと論文で発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」「現在までの進捗状況」で述べたように、「西欧と東洋芸術あるいは,西欧と非西欧,西欧から見たマージナルすなわち周辺・境界の芸術」の影響関係を、特にロシアとジャポニズム、素人演芸などの問題から考察したが、ウダイ・シャンカールの活動に関して、既に一定量集めた資料の分析がまだ途中なので、今後はこちらを中心に進め、何らかの形で成果を発表したい。
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Causes of Carryover |
今年度は3つのシンポジウムがあり、特に公開シンポジウム『ロシア芸術とジャポニズム』で、「20世紀西欧芸術のジャンル・ヌーヴォー」と題する発表を行なったことで、最終年度に予定していた成果発表の一部を前倒しして公開する形になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度は、ウダイ・シャンカール関係の調査を進め、研究成果の発表に努めたい。
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