2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370170
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
与那覇 晶子 琉球大学, 大学教育センター, 非常勤講師 (30412860)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 沖縄の文化表象 / ジュリ(遊女) / 辻遊郭 / 琉球美人 / 沖縄芸能 / 上間郁子 / 乙姫劇団 / 芸能者 |
Research Abstract |
まず沖縄資料関係アーカイブ『琉文21』の主宰者・新城栄徳さん、写真史研究者/琉球舞踊家の仲嶺絵里奈さんに共同研究者として本プロジェクトに係っていただき、「絵画や写真に見るジュリの表象」への視点が拓かれた。仲嶺さんを通して写真史家・東京都写真美術館専門調査員の金子隆一さん、そして日本演劇学会会員で、以前から沖縄映画史の研究を掘り下げている世良利和さんも第一回のシンポジウム『絵画、写真、芸能、映像に見るチージ(辻)、ジュリ』(2014年3月8日、沖縄県立博物館・美術館)に参加していただいた。予定より多くの聴衆が来場され、4時間半の長い研究発表と質疑になった。芸能者としてのジュリの主体が浮かび上がってきたと同時に、商品化されたジュリの絵画や写真の存在もまた浮上してきた。近代化の中で遊郭とジュリに対する日本本土と同様な施政や現象等も見られた。 近世琉球時代に描かれた絵画の中に三線を弾くジュリの表象があり、また近代には琉球美人として辻の女性たちが多様に絵画に描かれ、かつ写真に多く撮られている。 その他、『琉球・沖縄芸能史年表』の明治から昭和における芸能、遊郭、ジュリのデータの集約ができた。また「琉歌」に網羅された遊郭とジュリの表象154首を島袋盛敏・翁長俊郎著『琉歌全集』から取り出した。そこからも近世から近代初期にかけての沖縄の遊郭やジュリの姿が迫ってきた。 さらに、元辻遊郭のジュリで卓越した芸能者として知られた上間郁子が初代団長として率いた女性だけの沖縄芝居劇団「乙姫」を継承した劇団「うない」のハワイ文化交流公演に同行し、ハワイ大学で開催されたワークショップでThe History, Repertoire and Characteristics of UNAIの報告をした。「沖縄の文化表象に見る近世・近代のジュリ(遊女)の諸相が徐々に輪郭を現しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
絵画、写真、芸能、映像についてはおおむね順調に推移している。第一回のシンポジウムで報告者が其々論考をまとめることができた故である。更なる掘り下げとデータ収集、分析が求められている。芸能の中で民謡に関してはデータ化が多少遅れているが三線を弾く女性たちのテーマは論稿にまとめた。また主体(芸能者)としてのジュリを代表する上間郁子に関しては2013年度日本演劇学会で報告した。もっと掘り下げたい。 達成できなかった点は移動するジュリの調査だが、可能な限り奄美や関西、そして宮古・八重山での調査を実施したい。劇団「乙姫」、劇団「うない」については、ハワイ文化交流公演への同行とワークショップ参加などで報告する機会があった。さらに戦前のジュリの芸能を含め、女性だけの演技や作品等について掘り下げたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに研究協力者を増やし、絵画、写真、映像に付け加えて芸能における歌・三線、民謡、琉球舞踊、そして衣服、歴史、ジェンダー、環境の視点からの掘り下げをする計画である。各自12,000文字以上の論文の執筆と報告を課題にした。また主体として、ジュリの様々な文化表象を実際に表現(表出)している民謡歌手、琉球舞踊家、沖縄芝居役者にアンケートを実施し、どのように辻やジュリが繰り返し再現されているのか、大まかな概要をつかみたい。表現する側の認識と受容者の現在の認識の調査である。そのため可能な限り沖縄芸能を享受する観客/聴衆へのアンケートを実施する予定である。文芸の関係資料収集もスタートさせる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じたのは、シンポジウムに配布予定の論考集(報告書)の出版予算が当初200,000 円の計画にしていた所、その半額で済んだ事と、英語論文(9000語~10000語)の校正として残していた予算6万円が、論文の最終提出期限が翌年の7月に伸びたため、支出も伸びた故である。英語論文は三本あり、一本は、すでに2014年3月、国際コロキウムで発表した。もう二本も今年6月と7月に学会で研究発表することになっている。そのために英文校正費用として必要である。 上記に理由を示したように、2014年7月までに英語論文の完成原稿を提出しなければならない。論文名称はThe Modernization of Okinawan Theatre: Assimilation, Disassimilation, and Reconstruction 。この論文の校正のため予算をまず割り当てる。また2014年7月28日~8月1日まで英国で開催されるIFTR国際学会で研究発表するため論文校正が必要。研究発表は確定されている。Ikuko Uema's Specific Identity in the Male Oriented Modern Okinawan Theatreである。そしてまた2014年6月大阪で開催される日本演劇学会でパネルを組んで「沖縄の伝統芸能と西洋受容」のテーマで英語論文を発表する予定だ。以上、三本の英語論文のため校正代金として前年からの繰り越し金を使用する計画である。
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Research Products
(9 results)