2014 Fiscal Year Research-status Report
地球外の視点による地球観の共有 -地球観測衛星を利用した芸術表現技術の開発-
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25370171
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Research Institution | Kanazawa College of Art |
Principal Investigator |
鈴木 浩之 金沢美術工芸大学, 美術工芸学部, 准教授 (60381688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大木 真人 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, その他部局等, 研究員 (80578302)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 芸術 / 美術 / だいち2号 / ALOS-2 / PALSAR-2 / リモートセンシング / 地上絵 / コーナーリフレクタ |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年5月24日、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」が打ち上げられ、人工衛星を利用した地上絵制作を実施するための環境が整った。 だいち2号は電波による地上の観測を行う人工衛星であり、本研究の第一の目的である地上絵制作用に電波反射器の開発を行った。開発に伴う実験では電波反射器の小型・軽量化(運搬や保管の利便性を高める)や様々な天候に対応した自立性能の強化(風雨による転倒を防止)の改良を重ねた。開発した電波反射器は、埼玉県、石川県、鹿児島県、茨城県における性能試験の結果、衛星画像上に描画可能な描画材料として充分に機能することが確認された。また、電波反射器の製作に必要な材料について入手や加工が容易で安価な塩化ビニール製のパイプと金網を用いることで、小学生からシニアまで幅広い年齢層が製作に参加できることも分かった。製作の手順は手引書やWEBサイトで公開された。 鹿児島県(南種子町)や茨城県(つくば市・守谷市)において、小学生から専門学校生向けに芸術と科学をテーマとした教育プログラムを実施した。プログラムでは、人工衛星が地表を観測する仕組みや、人類が宇宙から地球を見ることが社会に与えてきた影響の大きさ、これからの宇宙利用についてレクチャーで学ぶと共に、自らが電波反射器を製作し、人工衛星にその位置を記録させる活動に参加することで、地球規模のスケールで地域社会や一人一人の人間の存在を認識する貴重な経験となったことが事後アンケート等で示された。 プログラムを支えた大学生等は、活動後のレポート内で芸術と科学が結びついた活動が意義深いと感じたことを述べている。 本研究の活動は2014年度に新聞報道等で20回以上取り上げられ、TVニュースでも度々紹介されるなど、関心が高まっている。さらに、国外での実施の可能性も高まり国際的な活動へと展開するものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電波反射器(コーナーリフレクタ)の開発は順調に進展し、充分な性能が得られるものが出来た。先行研究で使用していた電波反射器は大型で運搬や収納、風雨への対策が充分でなかったが、昨年度実施した実験によって反射面1枚当たりの面積比で四分の一と小型化し、軽量化された。また、金網の使用によって風が吹いた場合の転倒防止対策がなされた。決められた時間に同時に十数台の電波反射器を展開して地上絵を制作した茨城県守谷市の実験でも、実施した全ての電波反射器が衛星画像上に記録されたことで、保管のために折りたたまれた状態から運搬されて展開するまでの(目的に記されていた)簡便性や安定性が実証された。 学校教育における教育プログラムの開発を目的とした活動としては、種子島宇宙芸術推進協議会と協力して実施した「こども宇宙芸術教室」プログラムを実施した。この中で人工衛星の見学会を行うと共に、人工衛星の仕組みを理解して地上絵制作によって自ら実験を行うレクチャー・ワークショップを実施した。 2枚の衛星画像を組み合わせる手法で星空を描くグラフィックス表現の完成を目的とした活動は順調に進み、2015年4月~5月にかけて茨城県守谷市にあるアートサイト「アーカススタジオ」にて展示された。 一方、「だいち2号」の観測時に発する電波を地上で捉え、これを音として現場で聞こえるようにする試みに関しては、2015年2月に筑波大学の協力を得て受信した記録を分析したところ、予想していた設備や方法では難しいことが分かり、現在のところ進展していない。
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Strategy for Future Research Activity |
観測用の電波を受信することについては引き続きJAXAと協力して技術的な解決方法を探っていきたい。とりわけ、人間そのものの位置を人工衛星に捉えさせる方法についてより一層研究を進め、本プログラムへの参加によって間接的に参加者らが自らを宇宙から眺める体験が出来たと感られる活動に近づけたいと考えている。具体的には、アルミ蒸着プラスチックシートを風船状に膨らませ、これらを人間が手で抱えることによって電波反射を得る方法や、細く長い塩ビパイプにアルミ蒸着シートを巻きつけ、高く上に伸ばすことでアンテナの効果を得て電波を反射させる方法などが検討されている。これらの研究に関しては、今年度中に実験を終えて最終報告に盛り込みたいと考えている。 これまでの研究で得た知見と成果物に関して、中間成果発表の形で2015年7月~8月に東京にて展示を行うと共に、同会場にて小規模なシンポジウムを開き、専門家の意見を聞く機会を設ける。得られた意見を反映し、必要に応じて実験を追加した後に、合成開口レーダによる地球観測衛星を利用した地上絵制作技術の完成を目的とした金沢での制作を実施する。また、3年間の研究成果を金沢市民芸術村にて発表する。 本研究で得られた地上絵制作の手法は海外でも同様に実施可能であることを確認するため、モンゴル、ニジェールでの実証実験を実施する。 達成された目的に関して、成果をまとめた冊子を製作して配布すると共に、WEB上にて内容を公開する予定である。また、より広く研究成果を公表する目的でメディアにも積極的にプレスリリースを行い、公開を促進していきたい。
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Causes of Carryover |
開発した電波反射器が当初の予定より小型化出来たため、材料費を抑えることが出来た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究内容をまとめた印刷物の配布先が増える予定であり、印刷数を増やす費用に充てる。
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Research Products
(4 results)