2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370177
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
梅津 紀雄 工学院大学, 基礎・教養教育部門, 講師 (20323462)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ソ連 / ロシア / 冷戦 / 音楽 / 芸術 / スターリン / ジダーノフ / ショスタコーヴィチ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、主として冷戦初期、すなわち、ソ連でいうスターリン時代末期の状況について主として検討した。ソ連では文化政策が硬直したいわゆるジダーノフ批判に当たる。研究代表者の梅津は、すでにこのジダーノフ批判について詳細な分析を行い、一定の成果を得ているが、2010 年にロシアで出版されたヴラーソフの新たな文献などを消化した上で、さらに考察を深めた。 また、1949 年のニューヨークでの平和擁護会議の検討のために、ショスタコーヴィチ(1906-75)やニコラス・ナボコフ(1903-78)の関係文献を収集し、アーサー・ミラー(1915-2005)などその他の参加者の資料や当時の新聞・雑誌の記事を収集した。 また、平成25年度に引き続き、ロシア連邦モスクワ市にて資料収集を行い、ロシア国立図書館を利用し、ロシア国立文学芸術文書館などのアーカイヴでの調査を行った。 冷戦初期の時期はスターリンとまったく同じ日に没した作曲家プロコフィエフ(1891-1953)の晩年でもある。プロコフィエフの本格的な検討を前提として自伝と日記を読み進め、「作曲家の自叙:プロコフィエフの自伝と日記を中心に」と題して、研究プロジェクト「近代ロシア文化の自叙の研究:自伝的散文と回想を中心に」第1回研究会(2014年11月29日、早稲田大学)で報告した他、「作曲家にとっての自叙:冷戦前のプロコフィエフの日記と自伝」と題して、研究プロジェクト「20世紀ロシア音楽再考:社会主義経験の意義を問いなおすために」第1回研究会(2015年2月1日、札幌大谷大学)でも発表して、出席者の批判的な意見を拝聴した。 また、ジダーノフ批判のその後をめぐって、論文「雪どけ期のソ連音楽政策の転換過程 中央委員会文化部文書に見るその実態」(『ロシア語ロシア文学』第46号(日本ロシア文学会)2014年10月、111~130頁)を発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた資料収集はおおむね進んでいる。ただ、研究発表に反映できていない側面があるため、平成27年度の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね当初の研究計画のままでよいと思われるが、史料収集に関しては、特に、The University of Texas のNicolas Nabokov Papersをどう扱うかは検討の余地がある。平成27年度に実施予定の、雪どけ期の研究に関しては本研究の枠組みから逸脱すると思われるが、東京国際音楽祭(1961)を視野に入れるかどうかも、上述のNabokov Papersの扱いに関わってくる。平成27年度に一部を視察するかどうかを慎重に検討したい。 また、平成28年度に実施予定の「停滞の時代」についての研究に際しては、「後期ソ連」という視点も有益であり、その点に関して平成27年度から意識していくことも必要かと思われる。その観点から、ほかの研究者との連携の可能性も模索していきたい。
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Causes of Carryover |
外国旅費にかんする学内規程の変更と、旅程を数日短縮したことにより、外国旅費の支出額が大幅に減額になったことが主たる要因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定では、平成27年度はアメリカ渡航の予定であったが、アメリカと合わせてロシアにも渡航することを念頭においている。
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