2016 Fiscal Year Annual Research Report
Cold War and Music: From the Soviet View Point
Project/Area Number |
25370177
|
Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
梅津 紀雄 工学院大学, 教育推進機構, 講師 (20323462)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 冷戦 / 音楽 / ソ連 / アメリカ / 芸術大国 / 教養主義 / 亡命 / 文化政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度となる平成28年度は、雪どけ期に続いて、ソ連の「停滞の時代」に即して研究を進めた。ブレジネフらの「老人支配」時代のソ連は、一面では「停滞」していたが、芸術音楽の分野においては、シュニトケやペルト、グバイドゥーリナら、新たな世代の独創的な作品群が徐々に非公式領域から公式領域へと浮上し、認知を拡大していく時代だった。その過程で12音技法が容認され、事実上禁じられている技法は消滅するが、「推奨されていない」として口頭での検閲が執拗に行われ続ける。ソルジェニーツィンの国外追放やロストロポーヴィチ夫妻の市民権剥奪が物議を醸し、相次ぐ亡命者が不条理な管理と不自由を訴えることで、ソ連文化に対する否定的イメージが強まり、同時代的関心は低下する。その最中にヴォルコフ編『ショスタコーヴィチの証言』が出現し、ソ連文化に対する関心は活性化される。 こうした状況について、ソ連のコスコンツェルト(国立演奏会組織)や作曲家同盟などの史料収集に努め、既存のニ次資料を読み直し、新たな文献や過去3年の研究と比較検討して、鮮明に浮かび上がらせることを試みた。 得られた知見を元に、様々な研究発表を行った。米ソの共通性にも着目しながら、教養主義国家としてのソ連の有り様を芸術音楽から考察したのが「芸術音楽から見たソ連:雪どけ期のショスタコーヴィチを中心に」(4月23日、東京大学)である。冷戦の中でのソ連の音楽界の状況については、「後期ソ連の音楽界のいくつかの特質をめぐって」(9月6日、東京藝術大学)、「後期ソ連の前衛的芸術音楽にみる普遍性と個別性:アルヴォ・ペルトを中心に」(1月29日、「ポスト・クリョーヒン・スタディーズ」)、および「ストラヴィンスキー訪ソ(1962)とその周辺」(3月16日、東京藝術大学)において取り上げた。それらについては、今後論文などの形で公表していく所存である。
|