2014 Fiscal Year Research-status Report
スウェーデンにおける児童青少年と舞台芸術との関わりから見る芸術文化政策の実効性
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25370180
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
上倉 あゆ子 東海大学, 文学部, 講師 (70467520)
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Project Period (FY) |
2014-02-01 – 2017-03-31
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Keywords | スウェーデン / 舞台芸術 / 児童青少年 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、児童青少年演劇の質の高さが国際的にも評価されているスウェーデンの状況を検証し、児童青少年と舞台芸術との関わり方と、その背景にある制度・政策を明らかにすることを目的とする。 平成26年度は、現地調査として、スウェーデン児童・青少年舞台芸術ビエンナーレbibu.seに参加した。このビエンナーレは2年に一度スウェーデン全土の児童青少年演劇関係者が一堂に会する場であり、ここでのセミナー受講・作品鑑賞を通して、スウェーデンにおける子どものための舞台芸術の最新動向に関する情報・資料収集を行なった。開催地ヘルシンボリが児童青少年に関わる文化政策に力を入れているスコーネ地方に属することもあり、特に、スコーネ地方の地方自治体や学校における演劇関連の取り組みや、公共劇場(ヘルシンボリ市立劇場・マルメ市立劇場)における児童青少年部門の強化に関する情報収集を行なった。一部の自治体・学校がかなり戦略的に文化関連の政策を推し進めている状況が鮮明に見て取れると同時に、一方で、教育現場において教員の教育活動の中にいかにして演劇などの芸術文化活動を組み入れるかについては、スウェーデンにおいても様々な障壁が見られるなど、問題点も明らかとなった。また、スウェーデン・デンマーク・ノルウェーにおける舞台芸術のプロモーション方法・助成制度等の比較に関するセミナーおよび資料からは、スウェーデンにおいては、基本的に地方自治体ごとに異なる方法・制度をとっていることが明らかになった。そのため、今後は、国全体の大きな方針とは別に、複数の自治体の例を取り上げ、具体的な取り組みを見ていく必要がある。 現地調査で得られた情報などをもとに、地方自治体の取り組み、および、近年の舞台芸術活動の動向(作品のジャンル・公演数・全体における児童青少年を対象とした作品の割合など)に関して、インターネット・書面調査を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
育休取得の関係で研究開始年度がずれたことから、現地調査の内容などに当初計画とのずれが生じたものの、最新の動向を把握できる場での現地調査によって、今後のより詳しい調査対象とする地方自治体および制度・取り組みに関して見通しが得られた。現地調査・資料収集により基礎的な情報の収集は進捗しているが、特にアート・カウンセラー設置に関する資料・情報など、不十分なものもあり、今後さらに調査を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度は、アート・カウンセラー設置状況などを中心に、複数の地方自治体における芸術文化政策に関する調査を進める。当初計画では研究1年目にに実施する予定であった基礎的調査の部分を進展させ、スウェーデンの特色ある制度・政策を明確にし、学会報告等につなげていく。H27年度はスウェーデンでの現地調査実施が困難な状況にあるため、インターネットおよび書面での調査と、日本国内の状況に関する資料情報収集・訪問調査を中心に進める予定である。 H26~27年度の研究成果を踏まえ、H28年度には情報補完のための現地調査を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
現地調査での旅費について、航空券が当初見積もりよりもかなり安い価格で購入できたことなどから、差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として、スウェーデンからの図書を中心とした資料の購入・取り寄せ(輸送費)、日本国内における児童青少年演劇関連団体への訪問調査、日本国内において開催される児童青少年を対象とする舞台芸術の国際フェスティバル視察に使用する。
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