2016 Fiscal Year Research-status Report
スウェーデンにおける児童青少年と舞台芸術との関わりから見る芸術文化政策の実効性
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25370180
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
上倉 あゆ子 東海大学, 文学部, 講師 (70467520)
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Project Period (FY) |
2014-02-01 – 2018-03-31
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Keywords | スウェーデン / 舞台芸術 / 児童青少年 / 文化政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、児童青少年を対象とする舞台芸術の質の高さが国際的にも評価されているスウェーデンの状況を検証し、児童青少年と舞台芸術との関わり方と、その背景にある制度・政策とその実効性を明らかにすることを目的とする。 平成28年度は、スウェーデンにおける児童青少年向け舞台芸術に実際に携わる関係者への聞き取り調査および資料収集のため、平成29年2月・3月に現地調査を実施した。まず2月の調査ではストックホルムを訪問し、この分野の関係者の中心的組織であるアシテジ(国際児童青少年演劇協会)スウェーデンのNiclas Malmcrona氏と面会した。Malmcrona氏には、インタビューを行なうとともに、その他の関係組織とのネットワーク構築に協力いただいた。全国各地で巡回公演を行なっているRiksteatern(国立巡回劇場)の児童青少年部門芸術監督や、国際演劇協会スウェーデンセンターの関係者とも面会し、それぞれの組織の活動に関する情報を得た。3月の調査では、ヨーテボリおよびその近郊都市において、フリーランスのシアターメーカー、州立・市立の公共劇場、行政の文化部門担当者等を訪問、ストックホルムでは、複数のフリーグループ、フリーの劇団・ダンスグループの組合関係者、スウェーデン文化庁、ストックホルム市の文化部門担当者などと面会し、制度面と実際の運用面の両方について有益な情報を得ることができた。両調査を通じて、行政の担当者と現場の舞台芸術関係者のいずれも、現在の国・地方自治体の文化政策、舞台芸術を支える制度・支援、児童青少年向けの取り組み等に対して、概ね満足している状況が伺えた。しかしながら、州ごとに制度が異なっているため、全体像を把握することはアシテジであっても困難であること、近年においては児童青少年の舞台芸術鑑賞に関する正確な統計は厳密には把握されていない状況なども確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
第二子出産に伴い、2015年10月から2016年7月まで産休・育休を取得した。2016年8月より復職したが、10月末までは次男が定期利用の保育を受けることができなかったこともあり、校務と並行して十分な研究活動を進めることは困難な状況であった。校務との兼ね合いもあり、現地調査の実施が年度末となったことから、成果をまとめる作業に遅れが出ている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、平成28年度の訪問調査で得られた舞台芸術関係組織および地方自治体の情報の分析を進め、これまでの調査結果と併せて研究発表等の形で成果をまとめる作業を進める。また、その研究成果をふまえ、資料情報の補完のための現地調査を実施する予定である。これまで、ストックホルムやヨーテボリといった大都市周辺の状況についての情報収集を行なってきているため、人口規模が大きく異なる北部の地方都市における状況についても聞き取り調査を実施したい。それらを通して、文化を享受する権利および子供の権利が広く一般に認識されているスウェーデンにおいて、既に十分な形で機能するだけ構築されているように思われる制度・政策が、子供の立場から考えた場合に実際その実効性がどういったものであると言えるのか、検証を進めていく。
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Causes of Carryover |
育休取得により、年度前半は研究活動を行なうことができなかった。また、前年度に妊娠・出産(産休・育休取得)とそれに伴う体調不良のために研究活動を順調に進めることができなかったため、その影響もあり、当初計画とは大きくずれが生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として、これまでの調査結果を補完するためのスウェーデン訪問調査と、関連図書・資料の購入・取り寄せに使用する予定である。
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