2014 Fiscal Year Research-status Report
アジア舞踊文化圏構想における共通言語の発見と創作舞踊発展のための基盤研究
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25370182
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小林 直弥 日本大学, 芸術学部, 教授 (90349986)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 間(ま) / 呼吸 / アジア / 舞踊表現の地域性 / 大平舞 / 白蛇伝 / 清元「北州」 / 素踊り |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度に関しては、アジアの舞踊表現における共通性の発見を進めるべく、韓国伝統舞踊における表現、技法を研究するべく前半期は、韓国大使館韓国文化院への取材協力のもと、比較・共通性発見への聞き取りを数度にわたり実施した。特に、韓国伝統舞踊家であり、韓国伝統舞踊「大平舞」の一人者でもある金順子氏にインタビューしさらに文化院で行われているレッスンにも参加し、その表現及び技法、そして精神的な概念に関し研究取材を実施した。その一方で、比較し共通性を探る必要性から日本舞踊、とりわけ古典舞踊の技法のデータ集積の必要から、日本舞踊家、花柳秀衛氏の協力を得て、日本舞踊における表現、また技法に関し、細かく分析した上で、一つ一つの動作・表現を映像記録した。また、同花柳氏には、日本舞踊における古典の名曲である、清元「北州」を踊ってもらい、その動作・振り・表現を映像に記録し、今後共通点を海外に取材した際に容易に説明できるよう映像化し分析をしやすいような工夫を実施した。さらに、当該年度においては、韓国の伝統舞踊との比較及び共通性を探る研究と並行し、中国における伝統芸術である京劇の中から特段日本舞踊との表現比較において比較対象としやすい作品として「白蛇伝」を題材として、秋から年度末にかけ、数回にわたりワークショップを実施し、その中から京劇にもまた日本舞踊をはじめとする日本の主要な伝統芸能の共通性として「間(ま)」という概念の発見に至ることに成功した。とりわけその研究成果は、シンポジウム開催及びパンフレットの意味もなす調査報告によってまとめられ、さてまた日本舞踊家を集め行った日本舞踊による京劇作品の舞踊化は中国のメディアからも取材を受けるなど、今後の研究発展の基盤を築くことができたものと確信している。また韓国伝統舞踊との共通性の発見を目的とした研究論文を作成し査読付きの紀要論文として成果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に関しては、とりわけ共通性を発見するということに主眼をおいた新しい観点からの比較研究を行うための基盤的な資料及びデータの集積、また課題点を出すためのそれぞれの国、また表現法や技法の相違などから、逆に共通点を発見すべく様々な試みを行った。中でも、韓国文化院での取材研究実施においては平成27年度さらに本格化させ、韓国、日本両国の芸能を通じた交流はもちろんであるが、共通性や一致点の発見を目標とした活動を展開する予定である。本研究の最大の目的である、相違点ではなく共通点の積極的な絞り出しから発見できた、音楽と音楽、さてまた呼吸と呼吸のあいだに存在する舞踊表現における「間(ま)」の概念が日本以外のアジアの文化思想に存在していたことは研究の中間段階での大きな成果であるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、まず韓国伝統舞踊「大平舞」を題材とした、日本舞踊の身体動作における呼吸を主眼とした「間(ま)」の概念に共通する双方の舞踊表現から、新しい創作舞踊を創造する際の一つのアジア舞踊文化圏の共通性の大前提として「間(ま)」の概念をさらに確実な理論として打ち出していく上で、「呼吸法」や精神的な概念の共通性をシンポジウム開催などによって、さらに解明しその成果を内外へ情報発信する所存である。また昨年末から両国における舞踊表現や芸能への認識の相違点を埋めるべく、さらに日本舞踊のルーツとして存在する韓国伝統舞踊や中国の古典舞踊及び演劇行為としての京劇との共通性発見を念頭にした比較研究を発展させ、中国の南方地域への研究取材も実施したいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究計画における研究資料の収集及びその整理、その結果における研究成果の実体化には時間を要するものが多く、また舞踊表現という人的な表現形態の比較研究をする際の準備期間が1年間の中で消化しきれないものがあったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においても研究エフォート内において最大限の研究成果を出すべく、研究資料となる論文を含む研究課題に対する論文の執筆をはじめ、取材、とりわけ海外を含む現地調査の実施にむけ準備の上実現すべく使用計画を遂行したい。
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