2017 Fiscal Year Research-status Report
アジア舞踊文化圏構想における共通言語の発見と創作舞踊発展のための基盤研究
Project/Area Number |
25370182
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小林 直弥 日本大学, 芸術学部, 教授 (90349986)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 創作舞踊 / 日本舞踊 / 新作舞踊 / 古典舞踊 / 歌舞伎舞踊 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度においては、凡そ古典舞踊が主流とされる「伝統」としてのイメージが強く、また本研究において論文や研究発表において発表してきたように日本舞踊における方法論や舞踊芸術領域としての概念が明確にされてこなかった点について、アジア、とりわけ中国や韓国の舞踊表現との共通性から我が国の日本舞踊文化の定義及び、そこから発展した「創作舞踊」領域の確立を目指した基盤研究としての主に方法論の提議を目標とした研究を行ってきた。具体的には、現在までに、とりわけ「呼吸法」具体的には、①息を吸う②息を吐く③息を止めるという三つの呼吸動作の中に、それぞれの時間軸に相応した「間(ま)」を有した舞踊音楽に相応した独自の呼吸と身体動作との連係にある身体動作の方法論は、日本の文化思考、さらにアジア全体に共通した舞踊表現概念に共通するものであることを研究において発見してきた。また、「手話」による演技的表現においても、感情表現の身体表出という限定的な表現に止まるのではなく、頭、手足を駆使した演技的表現、日本舞踊ではこれを「振」という表現として、江戸時代の歌舞伎舞踊を発生として、こんにちまで我が国の舞踊表現の代表的な形として主軸をなしてきた。私達、日本の伝統的な文化、思想として保有したきた舞踊表現の概念には、古来より宮中や神仏など儀式性や祭儀性をともなった回転を主体とする「舞」の思想に加え、民俗的かつ習俗的な概念に基づく「踊」の思想も「振」という身体動作思考と共に日本舞踊が保有する基本的身体動作の基本となっている。こうした我が国、及びアジア的な舞踊動作の基盤を点や線、また身体の形だけに焦点をあてたバレエやその逆に心情表現を自由な形で表現する現代のコンテンポラリーダンスのような表現に直列的に摸倣したところで一致するところもなく、その違和感や問題を解決し創作舞踊の方法論とその実践法を論文や研究発表で実施してきた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究においては、日本の舞踊文化からの歴史的背景、とりわけ古代における宮中文化、また祭儀性を中心とした「舞」、また民俗文化を代表する「踊」。そして中世における能楽、またその後の近世歌舞伎において舞踊表現の中で舞台芸術として発展してきた「振」など、日本舞踊の概念や方法論が現状ない状態において、まずその方法論の確立と提議について、研究時間の制約がある中で調査、また論文におけるまとめとして時間をかけていたため、更なる研究における進行について遅れてしまった。また、本研究における最終的な目的として我が国における創作舞踊領域の確立とその基板の提議を目的とし、さらにそれが我が国だけではなく、広くアジア圏の舞踊文化に共通するものであることは、既に実践的な研究交流、とりわけ、中国、韓国の舞踊文化とその表現方法においても分析及び研究を本研究において実践してきたところであるが、そうした方法論の基盤を用いて実際面として、作品創作というカテゴリーにおける実験成果の発表の場、また本研究におけるまとめとした実際の舞踊家に向けた基盤研究のまとめができていないのが現状であり、その残された部分において当該年度において実行できなかった点において遅れてしまったと認識している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究においては、今までの論文発表(紀要論文投稿:査読有)において、数度にわたり、まず我が国の舞踊文化の基盤となる日本舞踊について、その概念と方法論、そして領域の定義に関し論文発表し、今まで広義において定義されることのなかった日本舞踊領域とその身体、また表現方法について分析、また定義をした上で、アジア舞踊文化圏としての中国、韓国の伝統的舞踊文化との比較や共通点の研究、さらに我が国における琉球芸能における比較研究を行ってきた。そうした成果を踏まえ、日本の舞踊文化の立場から創造される創作舞踊領域の確立と提議を提案すると共に、その理論研究発表に関しても論文発表を用いて実施してきた。しかしながら、本研究のもう一つの目的として、創作舞踊理論の基盤を用いた舞踊創造作業の実践、具体的には、研究で得ることができた理論を実際に舞踊家に理解してもらい、その上で作品制作を実施し、それを実際に舞台発表として実践させることで、本研究が舞踊表現の新しい実践として、日本の舞踊文化、ひいてはアジアの舞踊文化圏の共通性とその可能性を用いた研究成果のまとめとすることができるため、まず研究成果を活かした作品制作とその発表、そして実際に研究に携わった舞踊家の意見も取り入れた成果物の発表を実践することを計画している。
|
Causes of Carryover |
当該年度においては、研究成果の発表における理論的な資料の作成、及び研究成果としての創作舞踊作品の実践的制作及び舞台を用いた基盤及び方法論の研究発表に向けた論文作成などに時間を生じてしまい次年度使用額が生じてしまった。そのため次年度においては、まず研究生に基づいた日本舞踊及び日本の舞踊文化理論、さてまたアジアにおける主に中国、韓国の伝統的手法も参考とした創作舞踊の実践的な方法論の提議として、作品台本の制作、日本舞踊家との研究協力による研究成果を用いた共同創作作業、及び舞台発表を通じた本研究の成果発表会の実施。そして研究成果をまとめた成果物の作成を計画している。
|