2013 Fiscal Year Research-status Report
近代における能楽の伝授と受容の諸相―免状に見る梅若家と素人弟子
Project/Area Number |
25370185
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
三浦 裕子 武蔵野大学, 能楽資料センター, 客員教授 (30646287)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 研究者交流 / 国際情報交換 / 研究会開催 / 資料のデジタル化 / 資料収集 |
Research Abstract |
本研究ではシテ方観世流能楽師で梅若家第52代当主・初代梅若実が記した『伝授免状控』の解読を通じて、梅若家に師事した弟子の動向および近代の能楽における伝授の諸相を解明することを目的としている。そのため、今年度は以下の4項目にわたる研究活動をおもに行った。 [5回の研究会の開催]初代梅若実資料研究会(会員は以下の8名。連携研究者=土谷桃子、研究協力者=加賀谷真子・氣多恵子・小林責・中司由起子・深澤希望・別府真理子、研究代表者=三浦裕子)による研究会を5回催し、初代梅若実関係の『伝授免状控』をはじめとする諸資料の解読・精査につとめた。開催日は2013年8月26日、10月4日、11月15日、12月20日、2014年2月28日である。なお、2月28日には前原恵美氏(有明教育芸術短期大学准教授、常磐津三味線の研究家・演奏家)をゲスト・スピーカーに招聘し「三味線音楽・常磐津の伝授をめぐって」の講演を依頼した。これにより、近世・近代における常磐津三味線における伝授の歴史・実態を学び、能楽との比較を通じてその問題点を明確にすることにつとめた。[資料のデジタル化およびデータの共有化]初代梅若実筆の『伝授免状控』の撮影を通じてデジタル化を行い、研究会会員におけるデータの共有化を図った。[資料収集]今熊野神社(京都市)および杭全神社(大阪市)をはじめとする熊野信仰・起請文に関する資料、また雅楽・茶道など伝統芸能に関する書積などを収集した。[国際情報交換]加賀谷真子(ウィリアムズ大学教授、在アメリカ)と明治時代の能楽の諸相など研究テーマに関する情報交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下、計画していた4項目を遂行することができた。[5回の研究会の開催][資料のデジタル化およびデータの共有化][資料収集][国際情報交換]。また研究会ではゲスト・スピーカーを招聘して三味線音楽と能楽との伝授の諸相を比較検討するなど、広い視野から研究課題を考察する機会を設けることができた。 以上により、2013年度における研究はおおむね順調に進展し、2014年度以降の研究の推進を円滑に行う準備が整ったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
おもに以下の4項目にわたる研究の推進方策を計画している。[研究会の開催]初代梅若実資料研究会(会員は以下の8名。連携研究者=土谷桃子、研究協力者=加賀谷真子・氣多恵子・小林責・中司由起子・深澤希望・別府真理子、研究代表者=三浦裕子)による研究会を引き続き年5回程度開催し、初代梅若実関係の『伝授免状控』をはじめとする資料の解読・精査を進める。[国際会議での発表]今年度は8月末にEAJS(日本ヨーロッパ研究協会)がリュブリャナ大学(スロベニア)で第14回国際会議を開催するので、研究協力者の加賀谷真子・氣多恵子・深澤希望と、代表研究者の三浦裕子と本研究テーマに沿ったパネル「能に見る伝授の諸相―近世と近代の歴史的視点から」を組み、研究成果を国際的に発表する。[国際情報交換]EAJS第14回国際会議における発表などを通じて、国際的に情報を交換する。[資料収集]能楽をはじめとする伝統芸能における伝授の諸相を記した資料を収集する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度に計画していた調査旅行のうち、書積による情報収集などで不要になったものがある。また、資料整理にかかわる人件費を節約することができた。ゲスト・スピーカーを招請し専門的知識の提供を受ける人数を2人予定していたが、候補者の日程調整がつかず1人となった。 2014年度については、8月末にEAJS(日本ヨーロッパ研究協会)がリュブリャナ大学(スロベニア)で開催する第14回国際会議に代表研究者・三浦裕子が参加することを予定していたが、研究協力者の加賀谷真子・氣多恵子・深澤希望とともにパネルを組み4人で発表することとなったので、そのための参加費・旅費が発生することとなった。また、ゲスト・スピーカーを招聘し専門的知識の提供を受ける人数を2人予定していたが、3人に増員することとなった。
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