2013 Fiscal Year Research-status Report
朝鮮半島における植民地都市のハイブリッド(hybrid)性
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25370200
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
朴 美貞 国際日本文化研究センター, 研究部, プロジェクト研究員 (50589992)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 朝鮮表象 / 植民地都市 / ハイブリッド(hybrid)性 / 植民地遺産・遺制 / 非文字資料 / 朝鮮博覧会 / 水産博覧会 / 朝鮮写真絵葉書 |
Research Abstract |
朝鮮半島における植民地都市に関する研究・調査をはじめ、その研究報告・協議の場を設けて問題意識を共有した。「アジアの記憶~植民地、遺産、見えるものと見えないものの境界」というテーマで国際シンポジウムを開催した。開催趣旨など詳細は下記の通りである。(2014年2月9日、於 国際日本文化研究センター第3共同研究室)。 研究会の趣旨は、植民地時代に形成された都市空間に残されている旧日本建築を建築物としてだけでなく、それにまつわる制度、言語、思想等々を含めた植民地的遺産としてとらえ、今日の韓国社会もしくは台湾・満州などの旧植民地エリアでどのように表象されてきたのか。また、同研究会では、今日の東アジアにおいて植民地的諸現象が「反日」という政治テーゼをめぐっていかに内在化されていったのかを分析し、東アジアにおける国際秩序に未来志向的かつ、具体的提言を投げかけることを目的とした。研究会参加者は、日韓の都市研究者、建築史研究者、非文字資料の収集・保存・展示に関わる関係者、非文字資料の刊行・流通の関係者、一般の非文字コレクター等々であり、20世紀初頭の国際秩序の再編の中で、東アジアの中心都市であった、「京都・京城・北京」における建築遺産と建築家に焦点をあて、20世紀初頭の東アジアにおける植民地都市のハイブリッド(hybrid)性を解明した。 また朝鮮関係の非文字資料についても分析を行い、研究成果について朝鮮表象や朝鮮博覧会、関連研究会などで研究報告を行った。 非文字資料に関しては、朝鮮絵葉書を中心に帝展入選作の朝鮮表象を分析した研究成果を刊行した。また、日韓の学問のあり方に関する国際的な協議の場( “Technology and Value of Brand”29th -31st May, 2014 Jeju National University, Jeju, Korea)を企画し、関連図書の韓国語の翻訳とともにシンポジウムを設け、研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
朝鮮における植民地都市のハイブリッド(hybrid)性を究明する対象としては、建築遺産、都市行政、人的・物的移動に焦点を当ててきた。その分析の際に、従来さほど重要視してこなかった非文字資料(絵葉書・絵図・地図・伝記等々)に注目し、これらの分析を中心に調査を進めてきた。その中で現存する非文字資料の膨大さおよびその分析による新たな事実や、それをめぐる様々な動向(誰が、どこで、何を、どのように、なぜ等々)といった脈略が少しずつ明らかになってきた。また、その分析の中で従来の歴史の中で公に語られてきた内容をはるかに上回る、あるいは裏付けできる歴史的記録(現実)が写されていることがわかってきた。今後は、そのような写された記録(現実)をより確たる歴史的事実(植民地居住日本人の埋もれた歴史・親日派と糾弾される旧植民地の人々や植民地遺産〈建築物・制度・行政など〉)に関する現地調査、関係者インタヴューなどを通じたより深い研究調査が必要であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
非文字資料に関しては引き続き研究調査が必要である。これまでの研究調査は、植民地都市の中でも中枢都市、例えば京城を対象とする分析が多かった。しかし、植民地都市と博覧会や、植民地施政にともなう人的・物的動向を追うなかで、朝鮮半島沿岸における移住漁村建設の始まりが朝鮮における植民地都市のハイブリッド(hybrid)性の解明のため非常に重要な対象であることに気づいた。そのため、今後の研究調査は19世紀の東アジアにおける海を介した移動と資源(海の産物)をめぐる研究視点と関連の共同協議の場を設ける必要があると考えており、海外の関連都市や研究所、研究者や関係者との意見交換を伴う現地調査と国際シンポジウム等の場を設ける予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日本国内に現存する植民地都市に関する非文字資料調査を行い、関連資料の文献複写費用として使用する予定をしていたが、調査により、対象となる資料が膨大であることが判明し、当該年度内に資料調査を完了することができなかったため。 26年度4月~5月にかけて、日本国内資料調査を再開し、文献複写が必要となる資料を特定し、25年度の未使用額および26年度配分額の一部を利用して関連資料の複写費用として支出を行った。
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