2014 Fiscal Year Research-status Report
中世仏教儀礼における音曲の復元的研究―読経と説経を軸として―
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25370206
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
柴 佳世乃 千葉大学, 文学部, 教授 (60235562)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中世文学 / 仏教 / 説話 / 儀礼 / 読経 / 法会 / 音楽 / 音声 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中世日本において行われた仏教儀礼について、〈音曲〉という観点から考究するものである。古代から行われてきた仏教儀礼―法会は、院政期から鎌倉初期にかけて芸能性をいっそう帯びるようになった。その芸能的要素がいかにして育まれ、体系化されていくのかを実態に即して明らかにすることが目的である。 26年度は、法会を音曲的観点から眺め、芸態復元に結実させるべく、以下のような研究を行った。まず、読経・講式に関して、『読経口伝明鏡集』『声塵要抄』『如意輪講式』『尊師講式』などの資料の調査、読解を行った。また法会の実態調査として、比叡山延暦寺(天台宗)、書写山圓教寺(天台宗)、西教寺(天台真盛宗)における法会を調査した。また、具体的な音曲復元に向けて、声明の専門家・実唱家と複数回の打ち合わせ、意見交換を行った。さらに、それらの研究をもとに、宗教における身体観に及んで考究し、文学・思想史の研究者と共に、国際研究集会にて発表を行った。 本年度にまとめた研究成果は、以下の通りである。①【口頭発表】柴佳世乃「The Voice as Religious Body― Sounds of Reading and Chanting(宗教的身体としての音声―経典読誦の声)」(ヨーロッパ日本学協会 EAJS 2014年国際研究集会、於スロベニア、リュブリャナ、2014年8月29日)、②柴佳世乃「『声塵要次第』翻刻」(『宗教的身体テクスト資料集』:ヨーロッパ日本学協会(EAJS)リュブリャナ大会パネル資料、pp.21~30)、③柴佳世乃「慶政と延朗―『尊師講式』をめぐって―」(『国語と国文学』92巻5号、2015年5月、pp.77~88)、④柴佳世乃「念仏と声明―良忍をめぐる〈声〉―」(融通念仏宗大通上人三百回忌御遠忌記念論文集、法蔵館、近刊)、⑤柴佳世乃「六所家蔵東泉院本『読経口伝明鏡集』について」(富士市博物館、近刊)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料の読解を着実に進めている。当初の研究計画にあった『読経口伝明鏡集』『声塵要抄』に加え、天台宗の中尊寺・書写山圓教寺に関係する澄憲作『如意輪講式』をも対照として、声明の専門家と協働して作業を進めている。また、『尊師講式』なる鎌倉初期の講式を見出し、読経と関連づけて文化史の中で考究しているところである。 国際研究集会にて発表を行ったほか、論文(資料紹介を含む)を4本執筆し、うち2本は公刊されて成果を公にしている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、広く資料の調査と読解を行い、また研究協力者(声明の専門家)との意見交換、打ち合わせを通じて、読経音曲を含めた法会の音曲復元を推し進めたい。 声明家とは、『如意輪講式』復曲の作業を協働で行っている。引き続きそれらの作業過程における音曲復元のポイントをつかみつつ、読経音曲の復元に生かす。
なお、26年度は約4万円の未使用の研究費を残した。これは、『如意輪講式』復曲のための打ち合わせおよび資料調査に、多く国内旅費の使用を予定しているためである。講式復曲および実演に向けて、中尊寺(天台宗、岩手県)、圓教寺(天台宗、兵庫県)での打ち合わせと資料調査の国内旅費に充てる。
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Causes of Carryover |
26年度は約4万円の未使用の研究費を残した。これは、『如意輪講式』復曲のための打ち合わせおよび資料調査に、多く国内旅費の使用を予定しているためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
講式復曲および実演に向けて、中尊寺(天台宗、岩手県)、圓教寺(天台宗、兵庫県)での打ち合わせと資料調査の国内旅費に充てる。
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