2015 Fiscal Year Research-status Report
中世仏教儀礼における音曲の復元的研究―読経と説経を軸として―
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25370206
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
柴 佳世乃 千葉大学, 文学部, 教授 (60235562)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中世文学 / 仏教 / 儀礼 / 読経 / 芸能 / 説話 / 法会 / 音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中世日本において行われた仏教儀礼について、〈音曲〉という観点から考究するものである。 27年度は、法会を音曲的観点から眺め、芸態復元に結実させるべく、以下のような研究を行った。まず、読経・講式に関して、『読経口伝明鏡集』『如意輪講式』『尊師講式』などの資料の調査および読解を引き続き行った。特に『如意輪講式』については、中尊寺法会における実唱に向けての作業に加えて、書写山圓教寺にて新出の本を2点見出した。あらためて書写山の宗教文化を考究する手がかりになる、貴重な資料である。具体的な音曲復元に向けては、声明の専門家・実唱家と複数回の打ち合わせ、意見交換を行った。また円教寺、西来寺、延暦寺、厳島神社において法会調査、実地踏査を行った。 本年度にまとめた研究成果は以下の通りである。①柴佳世乃「法華経と読経道―芸道としての法華経読誦―」(国際日本学シンポジウム「日本化する法華経」、2015年7月5日)、②柴「唱導書に見る音楽・音曲」(シンポジウム「記された音楽の世界―楽書、説話、唱導書から―」、藝能史研究會、第39回東京例会、2016年12月6日)。上記2つとも、当該学会からの依頼にて、読経道の音曲および唱導の音曲について論じたものである。③柴「慶政と延朗―『尊師講式』をめぐって―」(『国語と国文学』92巻5号)は、鎌倉初中期における持経者像を、『尊師講式』に読み解き、これが慶政の真作であることを論じた。④柴「念仏と声明―良忍をめぐる〈声〉―」(開宗九百年・大通上人三百回御遠忌奉修記念論文集『融通念佛宗における信仰と教義の邂逅』、法蔵館)は、念仏と声明を読経との関連で論じ、文化史的位置づけを試みた。⑤柴「『読経口伝明鏡集』―解題と影印」(『六所家総合調査報告書 聖教』、富士市教育委員会)は、真言宗修験道系の寺院に伝わった『明鏡集』を紹介し、本の内容を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料の読解を着実に進めている。また、声明の専門家との講式実唱に向けての作業は順調に行われ、28年度前半にその成果を公開する予定である。ただ一方で、読経の実唱については少し遅れているが、唱導の実唱復元と密接に絡む作業であり、28年度後半には引き続いて復元の基礎作業を固めたい。 また、具体的な資料の読解に基づいて論文3本が公刊され、学会発表を2回行った。学会発表については、依頼により、原稿化を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、資料読解と法会調査を行い、また研究協力者(声明の専門家)との意見交換、打ち合わせを通じて、読経音曲を含めた法会の音曲復元を推し進めたい。 声明家、声明研究者とは、まず『如意輪講式』復曲の作業を協同して行うので、それらの作業過程における音曲復元のポイントをつかみつつ、読経音曲の復元に生かすつもりである。
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Causes of Carryover |
27年度は未使用の研究費を若干残した。調査の日程に変更が生じ、27年度末から28年度初めにまたがる日程になったため、翌年度にかかる分の旅費が未使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
資料調査と法会における実唱復元の作業にあてる。
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Research Products
(5 results)