2015 Fiscal Year Research-status Report
明治期の〈知〉とメディア言説を通してみた軍記文学の文化的展開に関する基礎的研究
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25370208
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
久保 勇 千葉大学, 人文社会科学研究科(系), 助教 (10323437)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 平家物語 / 中世文学 / 芸能・芸術 / 軍記 / 近現代史 / 地方史 / 郷土史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,明治期に多様化した〈知〉と拡大していく〈メディア〉のなかで,軍記文学が「文化」 としていかなる展開をたどり,明治の終焉とともにどのような段階に至ったのか,その経過と様相について調査研究をおこなうものである。本年度は研究計画最終年度にあたるが,複合的な事情により研究計画を1年延長させていただくこととした。 計画延長にかかる研究上の理由として,明治末の「地域」における軍記物語に関わる諸言説(資料)の存在が大きく浮上してきたことがある。明治期後半から全国的な規模で広がっていく「観光」振興あるいは「郷土史」編纂事業という動向のなかで,軍記物語が読み直され,「地域」の記述として再生産されていった営みを明らかにする必要が生じてきたのである。 具体的な一例として,「戦いの記憶と房総-近代からの視点」と題して小規模の研究会(於:立教大学)において口頭発表をおこなった。「中央」の史学アカデミズムで活躍した武士研究の泰斗・大森金五郎が,軍記を利用した千葉県の「地方」記述にかかるキーパーソンとなっていた実態等について明らかにするとともに,初期社会主義運動家(吉田たまき〔王へんに幾〕,白鳥健)が「地域」にかかる著述活動に軍記を参照していること等に注目した。叙上の近代「地域」の問題について,瀬戸内地域・北陸地域・房総地域に対象を絞り,新たな課題研究として科研費研究に申請を試み,採択させていただくことができた。計画最終年度に以上の曲折があったものの,新たな発展性ある課題の発見とその準備が整えられたことが本年度の大きな収穫であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度記載の本年度「推進方策」は「文献調査および調査データ集積」と「成果報告活動」の2点であったが,補助事業経費の執行を伴わず基礎的作業を継続してはいたものの,結果的に計画通りに進捗しておらず「遅れている」とせざるを得ない。次に記す理由によって「補助事業期間延長」を申請し,承認いただくことができた。申請書に記載した理由は以下の2点であり,研究課題にかかる理由については「研究実績の概要」に記した通りである。 【当該研究遂行の為のエフォート確保】研究計画当時予定していなかった業務(大学改革その他)が加わり,業務が多忙となった。 【研究遂行にかかる時間の確保】まず,初年度実績報告で示した文献調査の遅れ(調査対象資料の閲覧不可)である。また,明治期発表の軍記物語に関するメディア言説を複刻する「資料集」編集に時間(著作権処理問題等)がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は補助事業期間延長申請によって承認いただいた当該課題研究の最終年度となる。同時に,挑戦的萌芽研究として新たに採択された補助事業研究「近代「地域」の記述と『平家物語』の「記憶」をめぐる研究-史蹟紀行・郷土史を対象に」の研究遂行初年度にもあたり,エフォートの確保が第一の推進方策となる。そのうえで,本年度第3四半期(4月~12月)までに研究調査活動を終え,第4四半期(平成29年1月~3月)には成果報告を取りまとめる。具体的には以下となる。 【文献調査および調査データ集積等】明治期の軍記物語に関わる資料・文献を採録した「資料集」刊行へ向けた調査活動。「文献目録」と「本文編」(著作権許諾分)に掲載する資料を収集すると同時に,データ化の作業を進めていく。なお「文献目録」については,『平家物語大事典』(東京書籍2010),大津雄一氏『『平家物語』の再誕』(NHK出版2013)等の最新の研究をもとに作成を進める。 【研究打ち合わせおよび成果報告活動】本研究に関連する業績を持つ研究者との研究打ち合わせをおこなう。また「資料集」巻頭に掲載する「解説文」に執筆。さらに,本研究にかかる研究論文の執筆をおこなう。
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Causes of Carryover |
既述の通り,平成27年度は当初計画していた研究活動を遂行できない見通しとなったため,年度前半時点で「補助事業期間延長」制度の利用を見据え,補助事業経費をほとんど執行しない形を採り,次年度使用額が生じることとなっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度最も使用額が多くなっている「人件費・謝金」については,前年度と同様,データ入力を謝金業務としてではなく業者依頼とし,当該データ入力作業を平成28年度第4四半期にまとめて依頼(「その他」経費)する計画に変更する。次に使用額が多い「旅費」については,文献調査および研究打ち合わせにかかる国内旅費として,第3四半期までに執行していく。
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Research Products
(1 results)