2014 Fiscal Year Research-status Report
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25370212
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
渡辺 秀夫 信州大学, 人文学部, 名誉教授 (90123083)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 勅撰和歌集 / 和漢比較文学 / 礼楽思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)本研究課題の中間報告として、「和歌勅撰の思想」と題する、「第六章 和漢比較のなかの古今集両序――和歌勅撰の思想」以下「第十章 仮名散文の創出――古今集両序をめぐって」及び、関連する翻訳として聞一多「歌与詩」、朱光潜『詩論』(抄訳)を、「和漢比較研究の視角」と題する章下にまとめた拙著『和歌の詩学―平安朝文学と漢文世界』(561総頁・勉誠出版)を刊行した(6月)。 (2)勅撰和歌集に附属する奏上文の意義を有する真名序の公的な漢文章としての特質の評価については、『本朝文粋』等をはじめとする序の語彙・文体との関連を意識する必要があること、及び、これと位相的な落差をみせる仮名序の語彙・文体レベルでの関係性の解明のためには、フォーマルな仮名ぶみの特色の明確化に留意すべきことを認識するに至った。 (3)本研究課題の推進とともに明晰化され得たことは、それぞれの基底にある思想や、ものごとの捉え方の型、枠組みへの共時的・通時的理解なくして作品表現の解読は不可能に近いということであり(拙著と時を前後して刊行された、工藤重矩『平安朝文学と儒教の文学観』も同様の理解を示す)、これらは、礼楽思想(儒教的文学観)のみならず、作品の創造・受容過程における面的・層的なテキスト群の共有が必須であることを示すものであり、本研究から発展的に継続されるべき新たな課題を導くものである。 (4)その他、講演・学会活動等としては、①北京日本学研究センターに於いて、「草創期の仮名文について―奏上時に「仮名序」は無かった」と題する招待講演を行うとともに、「嵯峨朝文学の謎」と題する発表を行った同招待講演者 Wiebke Deneke・ヴィーブケ・デーネーケ氏(ボストン大学准教授・日中比較文学)と日中(和漢)比較文学の研究手法に関する共同討議を行った(5月10日~15日)ほか、学会参加2回、資料収集・研究交流・情報交換等3回。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の中間報告として、拙著『和歌の詩学―平安朝文学と漢文世界』を刊行できたことは、一応の成果であり、所期の目的の一斑を達成したこととなるが、なお、未解明の問題点も残る。
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Strategy for Future Research Activity |
従来の研究水準を超えて相当程度の成果を示すことができた半面、当初掲げたテーマの大きさに比して、なお解明しえないことも多く残る。年度内で結果を出しうる課題の絞り込みと、今後新規に開拓すべき課題の明確化を心がけたい。
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Causes of Carryover |
当初予定していた外国出張が先方の都合で、一回分叶わなかったことにより、予算に余剰が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、H27年度請求額と合わせて、来年度(最終年度)の出張及び物品購入計画に適切に反映させることとする。
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