2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370220
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
新城 郁夫 琉球大学, 法文学部, 教授 (10284944)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 戦後沖縄 / 川満信一 / 戦後沖縄文学 / ジェンダー/セクシュアリティ / 思想史 / 東アジア / 共生 / ポストコロニアル |
Research Abstract |
本年度研究成果は、論文3本と国際学術会議での発表2回という実績に示されている。以下その具体例を記す。 1.論文として、A「脱国家のジェンダー・ポリティクスー沖縄と広島と難民」(ひろしま女性学研究所編『言葉が生まれる、言葉を生む』、34-48頁)。B「独立論から独立し、共生社会を構想すること」(第5回東アジア批判的雑誌会議報告書『連動する東アジア』、137-146頁)。C「憲法試案という企てと脱国家」(カルチュラル・スタディーズ学会機関紙『カルチュラルスタディーズ年報第1号』、51-62頁)の3本を発表。 2、口頭発表として、A「独立論から独立し共生社会を構想するー川満信一『琉球共和社会憲法試案』考」(ソウル大学・平和統一研究所での講演、2013年8月)。B「民族文学を男女の愛で語ることの問題と、アメリカ覇権下の東アジアでパレスチナ文学を語ることの可能性」(中国美術学院大学でのアジア現代思想会議での発表、2014年3月)。 上記において、主として、戦後沖縄文学における代表的表現者である川満信一の憲法試案を考察し、この文学的かつ思想的作品が、沖縄を含む戦後東アジアの歴史的現在への批判的介入として極めて重要な問題提起をはらんでいることを明らかにして、少なからぬ反響をもって迎えられた。これらの研究成果により、これまで戦後沖縄文学の思想史的営為として本格的にはとらえられてこなかった川満信一の琉球共和社会憲法試案の現代的意義を明らかにすることができた。 上記のほか、アートと思想との関連を探る研究成果として、以下の2点も本年度の研究成果の一端といえる。A、「森栄喜『Intimacy』のためにーまばゆい「退屈さ」と影の律動」(第39回木村伊兵衛賞写真集・森栄喜『Intimacy』巻末論考)、B、「生きられる写真、生きるための写真」(志賀理恵子氏との対談、『現代思想』5月号)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、本年度は資料収集が中心となり、論文や口頭発表は次年度以降に傾注する予定であった。しかし、依頼が相つぎ、資料収集と論文執筆および口頭発表も積極的に行った。結果として達成は順調に進展した。理由は、以下の2点。1、戦後沖縄文学を思想史的視座からとらえ返すという研究が、資料収集と論文発表の両面で順調に進行したこと。2.とくに、東アジアの知識人たちとの国際会議での討議を通じて、戦後沖縄文学の思想史的意義を広い視野からとらえ返すことができ、論文に反映できたこと。この2点において、本年度研究は順調な達成をみたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、特に、崎山多美の小説の分析そして岡本恵徳の批評の精読を通して、戦後沖縄における文化的、民族的、人種的「他者」との共生の可能性の考察に焦点を当てていく予定である。具体的には、『社会文学』やその他の学術誌への論文発表、そして国際シンポジウム「カルチュラル・タイフーン」ほかでの口頭発表等で研究発表を推進し、研究課題を達成していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品を発注したときの額に比して、実際に購入した額が安くなったため、差額が生じ、これを次年度に使用することになった。 研究課題推進のための図書購入費で使用する計画である。
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Research Products
(5 results)