2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25370220
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
新城 郁夫 琉球大学, 法文学部, 教授 (10284944)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 沖縄文学 / 戦後 / 思想 / ポストコロニアル批評 / 岡本恵徳 / 阿波根昌鴻 / 占領 / 非暴力 |
Outline of Annual Research Achievements |
戦後沖縄文学を、思想史的文脈において検証分析していく本研究は、これまで閑却されてきた戦後沖縄文学が有する思想史的可能性を明からにしてきたが、2014年11月に出版した単著『沖縄の傷という回路』(岩波書店)以降の本年度研究実績として、論文2本と学術シンポジウムでの3本の口頭発表をあげることができる。 論文『日本占領再編ツールとしての「沖縄返還」』(『現代思想』43巻12号)においては、これまで戦後日本の政策論的文脈に偏って論じられてきた『沖縄返還』(1972)を、環太平洋軍事覇権構成としてのアメリカの対アジア世界戦略における日本占領再編の枠組みのなかに位置づけ考察した。さらに、この覇権に対する抵抗を、中野重治そして岡本恵徳という戦後沖縄文学の中の重要な文学者の批評のなかに読み込み、その思想史的可能性を明らかにした。また、論文『倫理としての辺野古反基地運動』(『現代思想』44巻2号)では、現在の沖縄における反基地平和運動を、阿波根昌鴻の非暴力平和運動の思想的系譜に位置づけつつ、フロイトの1920年代戦争論との比較検討を通して、その倫理的思想史的可能性の広がりを明らかにした。 上述の論文発表と並んで、国際会議を含む学術シンポジウムでの次の3つの口頭発表も研究実績となる。1「阿波根昌鴻『人間の住んでいる島』を読む」(現代アジア思想会議、沖縄大学、2014年11月13日)、2「岡本恵徳を読む―消化しえないものの体内化をめぐって」(成蹊大学シンポジウム「岡本恵徳を想う」、成蹊大、同年12月3日)、3「『沖縄の被爆者』をめぐって」(国際シンポジウム「ジェンダー・フォーラムin広島」、広島留学生会館、同年12月18日)。 こうした論文および口頭発表を通じて、戦後沖縄文学が有する思想的可能性とその史的展開の実際を検証することができた。ここに、本年度の研究実績の核心を見出すことができる。
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Research Products
(5 results)