2015 Fiscal Year Research-status Report
本地垂迹の視点から見た慈円法楽歌についての基礎的考察
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25370221
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
石川 一 奈良大学, 文学部, 教授 (80193283)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 法楽歌群 / 寺社縁起 / 伊勢神道 / 天台仏教 / 神宮典略 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新古今歌人慈円の和歌作品検証のために、その自省期における「法楽歌」を中心に多角的な分析考究するものである。家集『拾玉集』収録の諸社法楽百首群に付された序・跋はその法楽意図が端的に表出しているので、彼の法楽歌の背景をなす思想体系究明の糸口となるものであった。 現在の慈円研究は仏教・神道、さらに日本思想史の研究者が積極的に言及しているので、これらの成果を視野に入れながら、家集『拾玉集』内の諸社法楽百首群の序・跋の分析だけに留まらず、寺社縁起に関係した彼の思想体系全体への視点を加味しなくてはならないと思われる。 平成27年度には、前年度の「神宮正権祢宜和歌」閲覧・翻刻を完成させたことを承け、この作品中にある『二十一代集抜粋 伊勢神宮作者』という作品の解明にあたることができた。神宮文庫蔵『二十一代集抜粋 伊勢神宮作者』閲覧・翻刻を許可され、全容解明を完了できた。つまり、「神宮正権祢宜和歌」との関係を明確にすることが出来たのだが、「神宮正権祢宜和歌」を検証することによって、「二見浦百首」作者を確定する危うさに言及した。 また慈円の法楽作品についての中間報告として『慈円法楽和歌論考』という著書を刊行することができた。これによって、慈円の法楽歌をより一層の内容究明を進展させることが可能になったのである。これからも伊勢神宮関係の資料を中心に、彼の思想体系の根幹をなすものの考察を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度は勤務校が替わるということで少し送れ気味であったが、26・27年度は進捗の度合いが上がっている。特に『神宮典略』所載の内務省神社局本「神宮正権祢宜和歌」の翻刻を完成させ、その頭註にある「二十一代集抜萃 伊勢神宮作者」なども調査範囲を拡張し、かなりの成果を挙げることができた。今後もこれらの調査・解析の上に、新しい考究を重ねていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに国文学研究資料館蔵(内務省神社局本)「神宮正権祢宜和歌」内に記された薗田守宣に拠る頭註を手掛かりに、神宮文庫蔵「二十一代集抜萃 伊勢神宮作者」を閲覧・筆写した上で、紙焼写真の頒布も戴いた。今後は、当該資料についての考察を基に、天理図書館蔵『御裳濯和歌集』の読解・全釈を進め、総合的解説として「神宮正権祢宜和歌」「二十一代集抜粋 伊勢神宮作者」との関係を書き下ろした上で、『御裳濯和歌集全釈』を刊行したいと交渉中である(出版社は快諾)。これらの著作を中心に、慈円の法楽作品における本地垂迹思想を体系的に解明し、本研究の目的に沿うべく粛々と推進していきたい。
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Causes of Carryover |
物品購入の際に値引き額が生じたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の物品購入額と合算して使用する。
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