2013 Fiscal Year Research-status Report
夏目漱石の文芸と美術との相関―漱石文庫資料による実証的研究
Project/Area Number |
25370225
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Wayo Women's University |
Principal Investigator |
仁平 道明 和洋女子大学, 言語・文学系, 教授 (00042440)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 夏目漱石 / 文芸 / 美術 / 相関 / 漱石文庫 / 美術雑誌 / 『ザ・ステューデイオ』 / 実証 |
Research Abstract |
本研究(「夏目漱石の文芸と美術との相関―漱石文庫資料による実証的研究」)は、夏目漱石の美術への関心と文芸との関わりについて、これまでに芳賀徹・尹相仁氏等の研究によって世紀末芸術の影響が指摘されてきたが、それらの研究の視野と成果は、漱石が受容したものの一部に偏っているように思われる。本研究では、東北大学附属図書館の漱石文庫資料のうち、漱石がロンドン滞在中だけでなく帰国後も購入し続けた美術雑誌『ザ・ステューディオ』(“The Studio”)、ロンドン滞在中に訪ねた美術館の図録、「渡航日記」等の未翻刻の部分にある画家との交流を示す資料等の詳細な検討によって、より広い範囲の美術との深い関わりがあったことを明らかにすることを企図している。平成25年度は、漱石文庫を調査し、①ロンドン滞在中の浅井忠との交流を示す「渡航日記」の記事や漱石全集未翻刻、未紹介のメモを確認することによって、漱石と浅井忠との関係の深さを再確認し、明治30年代後半の漱石の水彩画が当時の流行によるものという位置づけで片付けるべきものではなく、浅井忠の影響の可能性があることを考えるに至った。②また『ザ・ステューデイオ』の絵を模写した幾つかの例を確認し、ラファエル前派の画家だけではなく、他の絵画の流れへの関心が存在したことが実証的な明らかになった。③さらに『ザ・ステューデイオ』及びロンドンの美術館の図録にある、頁の剥ぎ取りを発見し、そこにあった絵画、記事等を確認することで、漱石の関心を実証的に解明する方途を明らかにすることができた。 上記の成果については、台湾における講演でその一部を公表したのみだが、平成26年度に論文の形で公表する準備を進めている。 なお、その美術への関心と文芸作品との関係については、平成27年度を中心に考察を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
漱石文庫の資料のうち「渡航日記」の漱石全集未翻刻、未紹介の記事、メモの調査はある程度進んだものの、漱石文庫の漱石旧蔵の『ザ・ステューデイオ』(“The Studio”)及びロンドンの美術館の図録と同版の資料を入手し、漱石自身によって剥ぎ取られたと考えられる頁に、どのような絵画、記事が存在していたかを確認する作業が、資料を外国から取り寄せて入手できた量が予定通りのものにならなかったため、漱石の美術への関心を実証的に確認する作業が、やや遅れているためである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究が「やや遅れている」という自己評価をせざるを得なくなった理由は、主として、海外からの資料の入手が遅れたためで、平成26年度は、その問題を解消するために、まず、漱石文庫の『ザ・ステューデイオ』(“The Studio”)及びロンドンの美術館の図録等と同版資料の入手を促進したい。それをふまえて、前記の方法による漱石の関心の内実を実証する作業を進め、講演、口頭発表、論文等の形で公表すべく、資料の分析と考察、原稿の執筆を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の使用予定額より約200,000円程度少ない使用額となった。東北大学附属図書館蔵漱石文庫の夏目漱石がロンドンで購入し、また帰国後に購入した漱石旧蔵の『ザ・ステューデイオ』(“The Studio”)及びロンドンの美術館の図録等で漱石が剥ぎ取ったと考えられる頁に存在した内容(絵画の写真・図版及び解説等)を確認するために入手を図った同版の雑誌・図録等について、外国への注文による入手がやや遅れているため。 平成26年度においては、上記資料等の未入手分の入手を図り、また海外等における成果発表についても予定通りの回数を実施するよう努め、さらに最終年度に予定している海外からの参加者をも加えたシンポジウム等の準備を進め、予定額を使用することとしたい。
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