2013 Fiscal Year Research-status Report
古代日本文学における河川交流の研究―日本海と瀬戸内海を繋ぐもの―
Project/Area Number |
25370235
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
堂野前 彰子 (岡本 彰子) 明治大学, 経営学部, 講師 (50588770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 任仲 明治大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (30599577)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 古代日本文学 / 琵琶湖水系 / 三輪山伝承 / 丹塗矢伝承 / 倭姫巡行 / 経済活動 / 交易 |
Research Abstract |
25年度は琵琶湖―宇治川―木津川水系を中心とした南北にわたる河川交易と、紀伊半島を横断する紀ノ川―吉野川―櫛田川という東西河川交易の様相解明を目指した。そのアプローチ方法として、Aテキスト研究とBフィールド調査を行った。 Aテキスト研究では、古代文学である『古事記』『日本書紀』『万葉集』『風土記』に加え、中世文学である『倭姫命世記』および『神道集』の研究を行った。中でも特に『倭姫命世記』を丹念に読み込んだことから、倭姫巡行には記紀に描かれていたような神話的意味ばかりでなく、隠された意味があることがわかった。すなわち、その巡行地でその土地の神や豪族から帰順の印として御田を献上されていたことを根拠に、倭姫巡行には経済的意味があるのではないかと想定した。そこでBフィールド調査でも倭姫巡行の地を巡り、それら巡行の地が祭祀場であると同時に、水上交通の要衝であることを確認した。その結果、倭姫巡行の物語は、伊勢神宮設立を支える経済活動であったことが明らかとなった。 また、Aテキスト研究で改めて記紀の三輪山伝承と『山城国風土記』逸文の賀茂伝承の研究を行い、その背後には、かつて難波潟で繋がっていた大和川―淀川―鴨川および木津川水系があることがわかった。そのような水系の存在を視野に入れれば、今までその関係が不明確であった三輪山伝承と賀茂伝承は無理なく接続する。神話の型としての類似ばかりでなく、実際の人々の動きとしてその繋がりは確認でき、そのような移動の背景に、疑似的血縁関係を結んで同族と称しはじめた人々の経済活動があることにも気がついた。そのような琵琶湖水系や大和から和歌山にまで至る、紀ノ川水系は、『万葉集』の羈旅歌でもよく歌われており、古代人の実生活の中でもそれら水系を利用した人々の移動を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
A文献研究の『神道集』の注釈作業は、月1回のペースで研究会を開き、順調に進んでいる。アルバイトを雇っての『神道集』本文および校異の打ち込み作業にやや遅れがでているものの概ね予定通りである。Bフィールド調査に関しては、国内外の現地案内人(韓国調査・東北調査)の協力があって、当初予定していた地域の調査を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年に引き続いて琵琶湖水系における交易の様相解明を行いつつ、それを発展させた形で、日本海を利用した水上交易に関しての研究を進めるものとする。とりわけ、日本海と瀬戸内海を結ぶ、由良川―加古川水系を利用した人々の交流を明らかにするべく、アメノヒボコ伝承をとりあげる。今までの研究では、『播磨国風土記』におけるアメノヒボコの足跡と、『日本書紀』におけるアメノヒボコ渡来ルートを結び付けて考えられることはなかったが、それら二つをつなげて考えることによって、古代交易の様相は新たな側面を見せるはずだ。つまり、日本海ルートを瀬戸内海ルートは北九州においてはじめて交わるのではなく、本州で最も低い分水嶺氷上回廊で繋がる由良川―加古川水系によっても結ばれていたのであり、その時中心となるのは日本海に面した丹波国(丹後・但馬)である。それら地域には多くに古墳が残され、かつ天皇の后を多く産出する地域であることは、その地が古代から繁栄していた証であり、そのような考古学や歴史学の研究成果ともインテグレートすることにより新しい神話解釈も可能になるだろう。 また、比較研究として、韓国の仏教説話『三国遺事』の研究を継続して行い、そこに描かれている日本との交流の様相を明らかにするとともに、日韓相互の視点から「渡来」「漂流」という問題を捉えなおすことも試みる。特に延烏郎・細烏女の伝承は韓半島からの渡来ルートを考える上で重要であり、その結果明らかになったルートと先に述べたアメノヒボコ渡来ルートを比較し、それらを統合した古代の渡来ルート解明を目指す。 さらに本年度はそのような研究と並行して、諏訪湖―浜名湖水系についての調査にも着手する。具体的には、『神道集』の諏訪縁起、赤城縁起などについての研究および注釈を深め、古代の東国における交易の様相解明の手がかりとしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度予定していた謝金予算を、アルバイトによるデータ打ち込み開始が遅れたことにより、使いきることができなかった。しかしながら打ち込みを予定している『神道集』の本文のデータ量は変わらないため、25年度の謝金を26年度に繰り越して、打ち込み作業をお願いしたいと考えている。 『神道集』本文データ打ち込みおよび、関連書籍・論文のデータベース作成の謝金と、それと平行して行う『神道集』注釈作業に必要な基本図書の購入に使用する予定である。
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Research Products
(13 results)