2018 Fiscal Year Annual Research Report
A study of postwar mental history of the history novel Booms (by a comparative study of two major novelists)
Project/Area Number |
25370239
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高橋 敏夫 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20236300)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 時代小説 / 市井もの / 武家もの / 藤沢周平 / 山本周五郎 / 時代小説ブーム / 戦争 / 戦後精神史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究「『歴史・時代小説ブーム』の戦後精神史(二大作家の比較研究による)」は、当初2017年度が最終年度であったが、藤沢周平をめぐる一部研究において必要な資料が揃わなかったため一年間の研究期間の延長を申請し認められて、本年(2018年)が最終年度となった。期間中、藤沢周平の最初期資料(未刊行短篇群)の発掘と収集に極力努めたものの、結局見つからない資料が複数あり、初出テクストによる初めての藤沢周平最初期作品研究は今後の課題となった。まことに残念だが今後を期したい。 ただし、文壇デビュー以後の「市井もの」優位・「武家もの」劣位関係の、諸作品を通した研究は、2017年度においてほぼ完成していた。本年度は、藤沢周平「市井もの」と、その起源の一つともいうべき山本周五郎の「市井もの」との関係を明らかにしつつ、二人の「市井もの」作品誕生には戦争(アジア・太平洋戦争)がかかわっていたことを確かめた。それらを軸にした単著『時代小説の「戦争」』刊行を夏頃から計画。ここ三、四年の間に発表してきた、新たな歴史時代小説をめぐる書評および時評に手を加え、大きなテーマごとに配置し直した。 全体を二部構成とし、第一部は「『死』の物語に抗う『生』の物語」、第二部は「堅固な歴史的常識をゆさぶる」とした。第一部は「Ⅰ強者にたちむかう」、「Ⅱ語り直しは生き直し」、「Ⅲ現代の暗黒、孤立と貧困にとどく」、「Ⅳこことは別の世界へ、これとは別の生き方へ」「Ⅴなかまたちの饗宴」の五章分けとして、それぞれに四、五本の文章を収めた。第二部には、三十三本の書評を並べた。個々の文章、書評には、本研究「『歴史・時代小説ブーム』の戦後精神史(二大作家の比較研究による)」で積み重ねてきた各ブームの研究が活かされている。なお、出版社との話し合いの結果、書名は『抗う 時代小説と今ここにある「戦争」』となり、2019年3月に刊行された。
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Research Products
(2 results)