2015 Fiscal Year Research-status Report
日本近代文学館他における川端康成・肉筆資料の調査研究
Project/Area Number |
25370242
|
Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
片山 倫太郎 鶴見大学, 文学部, 教授 (90253012)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 充正 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (30262786)
田村 嘉勝 尚絅学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50306081)
福田 淳子 昭和女子大学, 人間社会学部, 准教授 (70218923)
山田 吉郎 鶴見大学短期大学部, その他部局等, 教授 (80137687)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 日本近代文学 / 文献学 / 原稿 / 草稿 / 書簡 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、まず日本近代文学館では、同館所蔵の『山の音』の原稿をすべて点検し、改稿痕を模写する作業をおこなった。多種多様な改稿痕からは、完成稿に至るまでの作者川端の思索の軌跡を知ることができ、本研究の重要な位置づけとなるべき資料調査となった。 北海道立文学館に未発表書簡が十数通あるとの情報を受け、その調査に赴いたところ、重要な資料を発見することができた。たとえば戦中の石塚喜久三宛書簡であり、長文のこの書簡からは、石塚の芥川賞受賞に至る経緯や、また、満洲をはじめとする大陸植民地文学の事情の一端をうかがうに足るものであった。 茨木市立川端康成文学館の資料収集ついては概ね26年度までに終えており、27年度は引き続き資料の翻刻、精査、論考を継続している。その成果は、福田淳子他が「川端康成文学館 未発表書簡二通(横光利一宛、文学界宛)をめぐって」として論文としたが、ここには昭和10年における「文学界」の動向と、文芸懇話会への参加をめぐる川端、横光、小林秀雄などの動静が詳細に記されており、戦時期の文壇内部の人間関係等を知ることのできる貴重な資料である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度以来の茨木市立川端康成文学館の資料収集は終わり、現在はその精査と論考を進めており、すでに公表したものもあり、この件に関しては公刊を目指した準備は着実に進行している。 日本近代文学館に関しては、「禽獣」の調査と論考の発表はすでに終わっており、27年度に収集調査した「山の音」の原稿の調査を現在進めている最中である。 神奈川近代文学館の「千羽鶴」の調査については、これがHP上で公開されたところから一時中断しているが、「今後の研究の推進方策等」で後述するように、伊豆湯ヶ島に「千羽鶴」の原稿が存在することが分かり、その調査を含めてすすめていくことになる。 北海道文学館の資料調査は非常に有意義であったため、現在この精査、論考を進めている。 以上の通り、研究はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度であるため、収集の遺漏を補いながら、資料の精査、論考を進め、本研究の成果を公表することを目指す。 茨木市立川端康成文学館の100点余りにわたる新資料については、館とよく相談の上、公刊の方途を考えていく。館が公立であるため、その手順については慎重に進めなければならない。 日本近代文学館の原稿調査についてはまだ遺漏が多く、引き続き収集を進めながら、「山の音」を中心に論考を進め、発表する。北海道文学館の収集資料についても、論考の発表をおこなう。 上記の通り、「千羽鶴」の原稿が神奈川近代文学館に加えて、伊豆湯ヶ島にあることが分かったため、この調査をおこなう。伊豆には他にも未発表資料のあることが分かっており、合わせて調査をおこなうことにする。
|
Causes of Carryover |
研究協力者への人件費の支出が少なかったことが原因である。現地調査への同行は概ね達成されたが、その他の仕事の依頼が十分ではなかった。研究協力者との連絡を密にして、仕事を配分、依頼するべきであった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は最終年度に当たるため、整理された資料の最終確認が必須となるため、研究協力者とは連絡を密にして、仕事の依頼に努めることにする。 また、伊豆における新資料の調査研究が必須となったため、この方面への旅費等の支出に努めて、できるだけ多くの新資料の発掘に努めたいと考えている。
|